「カラシニコフ自伝」カラシニコフ

カラシニコフといえば戦争でよく使われているあの銃じゃないか?そうか、カラシニコフってのはそれを作った人の名前だったんだ。はじめて知った。ということはその人の人生もあるってワケで、そんなカラシニコフさんの自伝(口述筆記)である。
カラシニコフ(自分の子供時代にはAK47という、なんかAKB48みたいな呼び名だった)は世界で一番多く使われている銃で、アフガニスタンやアラブやアフリカなど世界の紛争地帯に行けば全員が持っていると行っても過言ではない世界一の流通量を誇る銃である。とはいえそのほとんどをロシアは現在作っていない。ではどこで...もちろん世界の工場、中華人民共和国である。じゃコピーかというとそこがややこしくて、ソビエト時代に当時のお偉いさんが「ワルシャワ条約機構軍ならパテントなしで作り放題」ってやったらしい。おかげで何億丁(冗談ではなくて、どうも本当にそんな規模で存在するようだ)が流通していても、肝心の開発者であるカラシニコフさんのところには一銭もパテント料が入ってこなかったらしい。というわけで中国人一人勝ちみたいなワケだ。
そして晩年のカラシニコフさんは政府から支給される年金で細々とアパート暮らしをしているのだ。とはいえカラシニコフさんは世界でその名を知らない人がいないくらいの有名人だから、政治的には国会議員とかになっていて、それなりに国家から尊敬を集めていたらしい。でも、少年時代には家族が裕福な農民ということで、シベリアに家族ごと送り込まれたらしい。本当は裕福なんかじゃなくて、大家族(何と18人兄弟)なので、彼らを食べさせるためにはそれなり多くの家畜なんかが必要なわけで、それを裕福ととられ密告された。いかにも恐怖政治的な理由でのシベリア送りだったんだね。
もちろんそんな苦境に甘んじるカラシニコフさんではないから、少年時代にシベリア脱出、そこから波乱の人生を送り、やがてカラシニコフを開発し国家の英雄となったわけだ。
何度も言うが、パテントは一銭ももらってないけど、年金は月に数万円くらいはもらっているらしい。共産主義的革命精神発露!
あまり銃は詳しくないんだけれど、確かコレと並び称されるのはアメリカのM16じゃなかったっけ?そうあのゴルゴ13が持っている銃だ。アレはカラシニコフに比べるとメチャクチャ高いんだ。そりゃパテント料が高いからでしょ。アレに比べるとカラシニコフは極端に部品数を少なくして、構造を簡略化して、故障しにくしている。水没したって、普通に撃てる。砂漠の砂が機関部に入ったって平気で使える。世界一頑強な銃なのだ。
本書は全編カラシニコフを賞賛する文章であふれている〜と思いきや、銃のことはそんなに取り上げられていない。むしろカラシニコフさんの波乱に富んだ人生、シベリア脱走から国会議員の栄光までの人生を語っている。その中でカラシニコフがどれだけカラシニコフさんの人生の栄光に寄与したのかを語っているのだ。
最近ロシア関連にはまりつつある自分にとってはとても興味ある一冊であった。
注意。
上記で「カラシニコフさん」とあるのは人間で「カラシニコフ」とだけあるのは銃のことである。よろしく。

カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男 (朝日新書 106)

カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男 (朝日新書 106)

あ、エレナ・ジョリーって人がゴーストライターね。(ゴーストじゃないし...)