材料運び

「な〜に。ほんの材用17枚くらいだから、二人でワゴン車に手積みしても一時間もあれば終わるよ」そんなオヤジの口車に乗ってしまった自分がバカだった。
 積まれれている材料はたしかに17枚だったが、どう軽く見積もっても一枚100キロはあるであろう材料。これを二人のかいな力だけで、積載量400Kのワゴンで製材所まで移動させようだなんて、あまりに考えがなさ過ぎるぞ、オヤジ。何とか一枚だけワゴンに移したが「こりゃフォークリフトじゃないとムリだ」と、いまさら気がつく。
 工場を売っぱらってから大きな材料を置く場所がなかったので、知り合いの木工所に置いてもらっていたのだが、それも製材しなければならないときが来た。幸いその木工所の社長がフォークリフトで動かしてくれたのだが、とてもじゃないがワゴンに乗らない。親戚の鉄工所から2トントラックを借りてきた。
「じゃ、運転頼む」お、おいおいオヤジ、俺はトラックなど運転したことないぞ。「俺もない」と、オヤジ...仕方がないので自分が運転した「では出発」ギアをローに入れ、クラッチをつなぐと、いきなりバックした。おいおいおいおい...シフトレバーをよく見ると、普通車のローの位置がバックだった。「後ろから見ていたら、やたら後退灯がついていたが、大丈夫か?」大丈夫じゃないっす。他にもワイパーを動かそうとしたらハザードランプが点いた。これほどまでトラックは普通乗用車と仕様が違っていたとは...慣れない車は運転しないほうがいい。
 結局一時間で終わるはずが、半日かかってしまう。東京での展示即売が近く、準備が必要なこの時に、こんな事ばかりやって無為に時間だけが過ぎ去って行く。アセリだけが確実に積み重なり、胃が痛い日々はいつ果てるともなく続く...