今日のバローズ

 久しぶりの表題とともにかえってきました、火星シリーズ。先日は火星の巨人ジョークを読んで「ゴーストライターじゃねえか?」というつまらなさだったのだが、それに続く「木星の骸骨人間」はいつものバローズ節が堪能できた。しかしこの話とてもよくできているんだが「壮大なプロローグ」といった感じで続きが是非とも読みたくなる。残念なことにこの一作をもって「火星のジョンカーターシリーズ」は終了である。
 さて前後してしまったが「火星の古代帝国」読了。なんかここまで来ると、もうカーターはスーパーマンであり不可能は何もない。例によって痛快無比の大活躍。お湯をかけると生き返る、カップヌードルもびっくりな「冷凍人間」クスリを飲むことで透明になれるが、人も見えないが自分も見えない。見たところ誰もいない空間で、会話だけでストーリーがすすむという。映画にしたら観客が暴動起こしそうな「透明人間」など、シリーズも終了間際だというのに、あまりにも荒唐無稽。しかもお約束の大団円である。読んでいるときは手に汗にぎる至福の時をすごせるのだが、読み終えるとなにも残らない。くだらないといえばそれまでだが、そんなすがすがしいまでの読後感がたまらない魅力なのだ。もっともここに魅力を感じない人は最初からバローズなどは読まないだろうが。
 また手順前後なのだが、この合本の厚木淳のあとがきを先に読んでしまった。やはり「巨人ジョーク」はバローズの手になるのではなくて彼の息子の作だったらしい。ジュブナイル版火星シリーズを頼まれたのだが、ジュブナイルゆえの制約に嫌気がさし、当時バローズの挿し絵も描いていた息子に「巨人ジョーグ」を書かせたのだそうだ。なるほどそういうことか。完全なゴーストじゃなかったわけだから、よしとしよう。