今日のバローズ

 「モンスター13号」読了。果たして人工生命に魂は宿るのであろうか?人工的に生命体を作り出そうとする博士が、その助手、手下、召使い、そして美貌の娘を連れてアジアの孤島で生涯をかけた研究をはじめる。やがて1〜12号までの「失敗作」の後に、完璧とも思える13号は誕生したのだが...
 んん...このプロットって映画にもなったHGウエルズの「ドクターモローの島」じゃないかって。あまいあまい。どっこいバローズの方が早かったです。むしろゲテモノというよりは、人口生命における魂の存在、あるいはその意義に関する深い考察が印象深い。後半、魂がないとされる人造人間達の方が、欲におぼれる人間達より、より崇高な存在と描かれているところがいい。というか人間の魂の本質というのは「欲まみれ」というところなのだろうか?と考えさせられる。マッドな博士は自分のつくりだした13号と娘を結婚させようとするし、それに横恋慕の博士の助手(元悪徳医師)やマニラの原住民の酋長(って、かなり表現悪すぎ)や、謎の人格者中国人などなど、あらゆる登場人物が入り乱れ、訳が分からなくなる。
 ラスト、人造人間13号の意外な過去...あまりに意外すぎて「コレで良いのか、おい」と思わずツッコミを入れたくなるようなご都合主義ではあるが、発覚。鼻白むが、それに至るまでの13号の葛藤、マッド博士の美貌の娘の葛藤に免じて(時代的にもこの辺がいいころあい)ヨシとしましょう。
 なにせ火星シリーズ合本の最終巻で「一冊分あまっちゃったので急遽入れました」的な作品(東京創元社版「モンスターマン」)なので、全然期待せずに読んだのだが、あいや、面白かった。バローズって案外シリーズ物より単発の、初期設定から構築しなくてはならない物語の方が傑作多いのでは?残念なことにこの「モンスター13号」はラストの安易なご都合主義のため、素晴らしき初期設定にもかかわらず続編を書き続けることが不可能になってしまった。実に残念である。話こそ違えども、何か「ターザン」を思わせる文体で、かなり期待していたのではあるが。「類猿人ターザン」の場合はラストが割と悲劇的だったので、その落とし前として続編..さらに続編...また続編、その結果不朽の名作シリーズとなったのだが。でも「モンスターマン」も傑作。これを手に取る機会がありましたら、ぜひ読んでください。★★★★