悪夢

 せっかく防犯用に取り付けたワイヤレスアラーム。その日にかぎってなぜか受信機を自室に持ってくるのを忘れてしまった。まさにその日の夜にショールームにあった展示品の半分くらい、それも高額品にかぎって、ごっそり盗まれた。あまりのタイミングの悪さ、あまりのマヌケさ、あまりの運のなさに、しばらく茫然自失。なんとか気お取り直して、徹底して防犯器具の設置をしたが、まさに時すでに遅しである。リストアップしてもしょうがないのだが「ベネチアガラスのデコイ」「真鍮無垢のハト」「去年の県展に応募したカラス三羽の彫刻」「チャボのデコイ」「鶴亀彫刻墨壺」「運慶作(真贋不明)大黒様欅彫刻」「しまふくろう桂彫刻」「アンティーク調デコイ数体」「45センチ特大特注デコイ」「鯉親子欅彫刻」「製品版デコイ数体」「金魚彫刻」「ブックエンド2体一組の片方(なんじゃそりゃ?)」その他細々としたモノ...正確には大黒様が盗まれたときに警察がショウルーム内を写真に写していったから、その時の写真と今回被害にあったときの写真をつき合わせてみれば間違いない。
 二度あることは三度ある。次来られたら本当に自分はマヌケなので、各種防犯グッズを大量に買い込み、工房の入り口やそこかしこに仕掛けまくる。これで次に来たときはおぼえていろ〜ではなくて、スグに110番するよ。そんな中、一昨年に県展に入選した作品とか結構高いバードカービングとか、名人が彫った、それでもちょっと見、高そうに見えない凄い彫刻とかが盗まれていなかっただけラッキーと思うしかない。とりあえず生き残った高額商品を安全な場所に避難させる。
 まあ自分のつくった作品なら「また作ればいいや」とあきらめもつくが、70年近く我が家の工房を見守ってきた大黒様に関してだけは諦めきれない。どうも我が家も運の尽きか?と、妙に気落ちしてしまうのであった。せめて大黒様だけでも見つからないであろうか?奇跡を信じたい。