「金星の死者の国」E.R.バローズ

 バローズ版ガリバー旅行記
 まったくこの金星シリーズの主人公のカースン・ネーピアってヤツは無能極まりない男である。全く助かる見込みのない処刑部屋にたたき込まれたり、人喰い人種につかまりあわや相方のヒロイン共々喰われそうになるし、死者の国の亡者に追われ、矢を射るがすでに死んでいる敵なので死なないで追いつめられ、優生学を生存の最重要課題とする種族に助けられるが、そこのヤツラにDNAを鑑定され生存不的確とされたり...ほとんど全ての危機を「偶然」で助かっている。ご都合主義(キライじゃないが)極まれり。
 あげく前巻のラストで「あなたが好きよ」と告白された相方ヒロインに「そんなこと言ったのは気の迷いよ、ふん」とすげなくされるし...踏んだり蹴ったりである。火星に来て「大元帥」と全火星人からの尊敬を一身に受ける身となったジョン・カーターとは雲泥の扱いである。カーターのような「ひと飛び30メートル」という特技じゃなくても、せめて何か地球人らしい特技をカーピアにもあたえてくいださい。ターザンにしろ、スーパーヒーローが闊歩するバローズものの中でもアイアンキング並に弱いヒーローだ。いや、そこがいいのだ。