「プロジェクトX 桂離宮 職人魂ここにあり」高橋光

 実はプロジェクトXがコミックになって、かなりの冊数が出ていたことを知らなかった。NHKの番組自体はわりと好きで、特に見るとはなしにチャンネルひねるとやっているといった感じでは見てはいる。本になっているのは図書館でよく見かけるので知っていた。
 でもって今朝、作者直々に「コミック出ました」とメールをいただいたのである。コレはスグに本屋でゲットするしかないと〜出かけた本屋は市内でも一番大きな所。なんとプロジェクトXコーナーの棚があり、各話取りそろっていましたが、必死で探しましたが「桂離宮 職人魂ここにあり」高橋光、見あたらず...「どうなっているんだ、この書店は!!」と、憤ったところ...目の前に平積みにされていました。すごい。
 日本の古建築を解体修復するにあたって直面する問題の数々。現場監督はあまりの心労から一晩で白髪(!)となり、プレッシャーのかかる作業に担当者たちがつぎつぎ「桂病」と称する病気が蔓延した。症状は無気力になり仕事が手につかない(なんか今の自分の症状と似てるな...)
 古い柱を再現するために、天井裏からとれた灰汁を、素手で柱せっせとこすりつけていた職人の手から、指紋が消える。そういえば近所の流木作家が言っていたけど「人間の手から出る油はとてもいい仕上げオイルになるから、木の表面をなでているだけでいい色合いが出てくるんだよ」と。
 なんか泣けてくるよ、全く。
 また、解体中に明治時代のずさんな修理後を発見したりする。「明治の名工ここにあり」などと威張ってはいても、遺された仕事にはごまかしがきかないという、恐ろしい事実を担当者たちに突きつけ、加えて過剰なプレッシャーとなったことだろう。後世に残る仕事の難しさ、怖さを感じる。
 これだけの改修やってその費用見積もりがたった9億円...ナニが驚いたって、ソレが一番驚いた。あきらかに請負会社が費用のかなりを持ち出ししているのではないかと察する。
 もう十年以上続いているではないかと思えるような不況で、日本人も自らのプライドに自信をもてなくなっている昨今。もう一度、自らの歴史を見つめ直すことによって、日本人としての自信を取り戻そうという気概、元気をもらえる作品。日本全国の公立図書館と学校図書館に一冊ずつそろえ置くべし。
 高橋先生とは、表サイトの開設当初から、高橋先生のお母さんまで含めてメールや掲示板などでおつきあいさせてもらっていたのです。あの時はいろいろありがとうございました。m(__)m