「今池電波聖ゴミマリア」町井登志夫

「ナニこの本、ひっでー、こうしてやる、えい」ドスドスっと、いきなり娘に踏みつけられる。何せタイトル「ゴミマリア」だもんな。おこるのもむりない。でも図書館から借りた本だからやめてくれ。なぜおこったか?知る人は知る。
表紙こそちょっと暗めなアニメ絵だったので、てっきりライトノベルかと思ったのだが、どうもライトとはいいがたいヘビーな内容。もっとも笠井潔までアニメ絵のカバーで再販されている時代だから、ライトノベルという定義はかなり曖昧だ。奈須きのこだってライトノベルでしょ?ライトノベルブームだから全部ライトノベルにして売り上げ倍増をはかっているのかもしれない。
さて本作、てっきり和製サイバーパンクかと思ったら、むしろ「男組」である。近未来の荒廃した高校での暴力による覇権争い。もっともこれはサイドストーリーで、メインはやっぱり「ボーイミーツイガール」だ。カネがほしい仲間と強引に入った強盗先で出会った少女に「友達になってほしい」と殺されるかもしれないのに、後日のこのこあいにいく主人公。そこに絡んでくる国家的陰謀...陰謀自体は説明くさくてどうでもイイのだが...国家財政が破綻し、暴力が支配し、カネが支配し、老人ホームレスがゴミにまみれて死んでいる救いようのない近未来の日本。若者たちは果てしない抗争で死屍累々。気がつけばほぼ全員死亡という救いのなさ。こんな青春小説もアリなんだなと。
最近は「黒豹」とか「阿修羅ガール」とか、ナニがなんだか訳のわからない小説ばかり読んでいたので、久しぶりにまともな文章の小説を読んだなといった感じである。作者はこれがデビュー作で第二回小松左京賞受賞作品(そんな賞があったのか!)図書館にも確かまだ数冊あったはずだ。ちょっと心にとめておこう。

今池電波聖ゴミマリア

今池電波聖ゴミマリア