「世界は密室でできている」舞城王太郎

おなじみ奈津川ファミリーサーガ。今回はその外伝。奈津川の三男、三郎の著作「ルンババ12シリーズ」の第一作。つまりは奈津川ものにおける劇中劇である。もっともこれ単体でも十分読める青春ミステリーではあるが。面白いかどうかはかなり賛否両論となることだろう。自分的にはミステリー部分は相変わらずわけがわからずどうでもいいのだが...中年になってからここんとこ、妙に青春ものには涙腺が弱くなってしまって...とほほである。
ところでこの本は厚さがたった200ページほどしかないのだ。ここんところのミステリブームにおける本の極厚化に反抗するように薄いのである。これだけ薄いミステリといえば清涼院流水の密室ものにもあったが(未読)それに対抗するように薄い。これじゃ出張中にあっという間に読めてしまうとなげいてしまったが、さに。あらずかなり内容は濃い。ページ数に比べて情報量がかなり多い。これはなぜかというと、本文中に改行がない。一ページの中にいったい文字がどれだけ詰め込めるのかと実験しているように、改行なしでぎっしり詰め込んでいるのだ。おかげで薄いにもかかわらず読了まで数日を要してしまった。
しかし自分は何でこんなに舞城王太郎ばかり最近は読んでいるのだろうか?どうせなら「マルドックスクランブル」でも読めばまだ友達がいもあろうに...実は近所の図書館に置いていないのだ。今度リクエスト出しておくことにする。
そうだ、肝心の「世界は密室でできている」だが...青春ってなんんかどんな青春でも、どこか甘酸っぱいんだよね。それが血まみれ連続密室殺人事件の真っ只中でも...いつものように殺人事件に意味はなく、犯人も誰でもいいし、突然複線もなく現れた人物が犯人で、しかもすでに殺されていたりしても。いつもの「犯人当て、トリック解明、ミステリなんかくだらねえ」と断言するような舞城節が炸裂しまくる。正統派ミステリファンの怒りを買いまくること必死である。
だからこれは青春賛歌なんだってば。

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)