「秘密の花園」バーネット

自分は世界名作劇場マニアです。
ここのところめっきりテレビアニメを見なくなってしまった。あ、実写は別ね。響鬼とネクサス(先日最終回)だけは見ている。そんなアニメを見なくなってしまった自分が現在唯一毎週見ているアニメが「雪の女王」だ。ゲルダ〜ウルウル〜と、43歳のいい年こいたおっさんが、毎週目頭熱くしている。そんな姿を家族に見られるのが恥ずかしいので、放送時間になると、こっそり自室にこもりウルウル〜と見ているのだ。文句あるか?
ほとんどお決まりといってもいいくらいの、毎週ストーリー見え見えの話ばかりなのだが、そこがいいんだよ〜
おっと「雪の女王」の話ではなくて「秘密の花園」だった。
ところでバーネットといえばなにを思い浮かべます?百人中百人が「小公女」「小公子」だな。自分も「秘密の花園」なんてタイトルこそアイドル歌手が歌いそうで、実際インパクトあるから「知ってる知ってる」という人が多いと思うが、さてその内容は?と聞かれて果たして何人の人がちゃんと答えられるであろうか?
そう、コレは文学界を探してみると結構ある「タイトルは有名で誰もが知っているが、ほとんど読まれていない名作」なのである。
一例を挙げれば「世界の中心で愛を叫んだけものハーラン・エリスン(自分も未読)
そんなセカチュウな一冊ではあるが、サスガにそれを裏切らないような書きだしである。何せ主人公の女の子メアリはインドで大富豪の両親の庇護のもと、召使いたちを好き勝手に酷使しまくるヤナ王女さま風な少女なのである。普通名作の主人公の少女と言えば「幸薄く不幸に見舞われてもめげず、明るさをなくさず、やがて白馬の王子様(あるいはそれに準じた人)が現れて超ハッピー...」ってのが王道だ。それがこの子、メアリに至っては、インドで猛威をふるったコレラで、使用人はおろか両親まで全員死んでしまったのに、ほとんど意に介した様子がない。「なぜわたしの着替えをしてくれないの」と。ハッキリ言って「ヤナ女の子」なのだ。こんな名作、初めてだ。
インドで身寄りの亡くなったメアリはイギリスの親戚に預けられる。ソコは何代も続いた大富豪の屋敷で、何百もある部屋や広大な庭を有する。そしてこの物語のキモである「秘密の花園」高い塀に囲まれて、入り口にカギが掛けられている花園がアリ、メアリはそれを発見する。
そこから物語がようやく名作劇場らしくなり、難病だと自分ですっかり思いこんでしまって、一歩も歩けず、屋敷のとある部屋のベッドで寝込んでいる少年とメアリ知り合う。
この少年がまたメアリに輪をかけたいやなガキ少年なのだ。
まさにココがこの物語の転換期。毒をもって毒を制す。なんとメアリの毒舌で少年がどんどん回復していくのだよ。そこへ先の「秘密の花園」が絶妙に絡んできて、ラストのカタルシスへと読者を誘ってくれるのであった。
あまたある名作の中でも、かなり曲解なお話。かなり難しい部類の話なると思う。大人が読んでも「深いな〜」と思うのだから、この話を子供が楽しめる訳はない。そんなことから「秘密の花園」が「タイトルだけは有名な名作」となってしまったのではないか。
なぜ自分が今頃コレを読んだかというと、先日仕事で「コマドリ」を作ったときのことだ。
「実はあの有名なバーネットの『秘密の花園』の花園を見本市で再現したのですよ」とコマドリを注文してくれたお客様から聞き、コマドリがいったいお話の中でどんな役割をしたのか非常に気になったのだ。読んでみてわかった。主人公メアリに秘密の花園へ通じるドアの鍵を渡すという重要なキーパーソン(パーソンじゃなくてバードだが)だった。
きっと作者のバーネットも正当派ストーリーに飽きてきて、ちょっと変化球が投げたかったのだろうと、勝手な憶測をさせてもらおう。アルプスの少女ハイジほどじゃないけど、結構おもしろかったです。
図書館にて「秘密の花園」を検索してみたら蔵書が山のようにあった。どれを借りたらいいかサッパリわからなかったので、ここは正直に図書館司書さんに「スミマセン、どの秘密の花園を読んだらいいでしょうか?」と聞いてみた。
「お子さんが読まれるのですか?」
「いえ、わたしです」くすくすくす(笑われる)
「とりあえず大人用の秘密の花園はありませんので、コレなんかいかがですか?」
と持ってこられたのが、少年少女向けの岩波文庫版上下巻。初版が1950年代で、そのころからかなり版を重ねてはいるが、内容自体に加筆改正はないようで「くろん○、び。こ、かた○、せ○し」など、あんまりな単語がぞろぞろ...ちび黒サンボ廃刊事件はただのスケープゴートだったのだと痛感した。てか、天下の岩波、何とかしろよ。

秘密の花園〈上〉 (岩波少年文庫)

秘密の花園〈上〉 (岩波少年文庫)

秘密の花園〈下〉 (岩波少年文庫)
はまぞう経由の写真は2005年版。あれ翻訳者が違うようだぞ?自分が読んだのは1989年くらいの版。ひょっとしてその辺の表現が改まっているのかもしれないなあ...