「カミーユ・クローデル 極限の愛に生きて」湯原かの子

カミーユ苦労でる。
ダジャレいっている場合じゃないくらい波瀾万丈で悲惨な人生を送った19世紀末から20世紀初頭にいた女流彫刻家の一生。とりあえず自分も我流とはいえ彫刻をやっている身なので興味があって読んだ。その当時、まだ女性には美術や芸術を生業とする世間のコンセンサスがなかった。そんなときに彫刻の世界で身を立てようとした女性の挫折に満ちた人生がそこにはあった。ロダンの愛人となりその彫刻の最大限に評価されつつも、世間の悪誹謗中傷、あるいはロダンの長年連れ添った愛人(当時はまだ正式な妻ではなかった)との確執。70数年の人生のほとんど30年以上を強迫観念にとらわれた狂気の中で精神病院にて過ごした晩年。もっと楽な人生があったのではないかと思えるイバラの道を....どうしてそんなになっていまったの?と、聞いてみたい。生まれる時代がもう100年遅かったら。もし現代に活躍していたのなら間違いなく世界に名だたる彫刻家としていきて生きていたであろうに。
とはいえ、現代。残された数少ない作品が、歴史上で際だつ彫刻家の一人であることに間違いないと語っている。
「極限の愛に生きて」
でもこの本のタイトルがとてもイヤだ。まるで究極の愛がロダンとの愛のようなタイトルじゃないか。確かに若き一時期ロダンとの愛に身も心もゆだねたこともあったであろうが、本書を読むととても「究極の愛」ではなくて「破滅」しか思い浮かばない。はめつに向かう愛が究極の愛だなんて、そんなはずはないじゃないか。もう少し「愛の流刑地」でも読んで勉強を(←おいおい)
ところで、本書。実は非常に不親切な作りになっている。なにがいけないって、これだけカミーユの作品について思い入れたっぷりに書き込んでいるのに、肝心のその作品の写真が一枚も載っていないのだ。たぶん版権の関係なのだと思うのだけれど...文章が思い入れたっぷりなだけ、作品の写真がないことが非常に惜しい。
そこでこの本を読む際には非常にいい参考書が最近出版されたので、ソレを参照しながら読むことをおすすめする。
これ↓
カミーユ・クローデル―天才は鏡のごとく (「知の再発見」双書)
こちらは図版が満載。
ところがこちらはあまりにエディトリアルに懲りすぎていて、肝心のカミーユの生涯が非常にわかりいくい構成になっている。ぱっと見、妙にカッコイイ編集にはなっているのだが、その訳注の多さや、挿入される作品解説が、肝心のカミーユの生涯を描写する邪魔になっている。つまり...まるで教科書の様に取っつきにくい構成になっているのである。その辺は時系列をしっかりふまえて書かれている本書の方が読み物としてよくできている。
この二冊を手元に置いて、本書を読みつつ、作品のタイトルが出てきたらその作品の写真を後者の本で確認するという手順で読み解くことをオススメする。

カミーユ・クローデル―極限の愛を生きて (朝日文庫)

カミーユ・クローデル―極限の愛を生きて (朝日文庫)