「OPローズダスト」福井晴敏

いや、かなり前に読了していたのだけれど、あまり感想書く気になれなくて遅くなってしまったわけだが。
特につまらないわけではないし、コレと行って文句があるわけではない。たぶん、コレを福井晴敏作品として最初に読んだ人は大満足な作品であろうと思うのだが...どうも納得がいかないのは自分だけであろうか?そりゃアマゾンの書評では褒めちぎっているが、やはりコレは「ローレライ」や「イージス」に比べると(あれらは稀に見る大傑作だから比べちゃいかんかもしれないが)あきらかにどうもなんだか、ちょっとなのである。
イージスやローレライのように、物語の舞台が極端に狭い空間、つまり特定艦内に限定されていない分。お台場というかなり広い解放空間であること。物語の要となるべき究極兵器(福井晴敏作品にはある意味必需品)のTpexが、3液混合型で、混合後に起爆臨界まで15分という設定(タイムリミット設定のはずなのだが)臨界前に容器を破壊して空気に触れると無毒化...つまり最終兵器の緊張感が今までの福井晴敏作品に比べてかなり劣るのだ。
トゥエルブYOやイージスでお馴染みのGUSOOのように、原爆並みの超高熱でないと解毒できないワケでもない、中途半端さが物語の緊張感というところでかなりソンをしていると思う。
ソレより何より、いつもの福井節。男泣きポイントが少ないのだよ。
てか、そんなところを期待しながら読む福井ファンというのも珍しいかもしれないが...
ローズダストに関しては、今までの福井晴敏作品ほど中年側主人公への肩入れ度合いが少ない。むしろ青年主人公(朋希)への入れ込みが強く、物語全体もこの青年主人公、朋希の「落とし前」を付ける話にウエイトが置かれている。もちろん中年主人公である警視庁公安部の並河にもそれなりの過去へのしがらみに対する落とし前な舞台は用意されているのだが、どうも前2作よりは弱いような気がする。
むしろ敵側として描かれているテロリスト集団のリーダー入江一功の方がイージスにおける如月行のような超人的イメージが強く、自分などは物語途中で「お台場なんか燃やし尽くしてしまえ」と逆に感情移入をついしてしまうほどである(その辺が作者の意図かどうかは?)
どちらにしろ、近年のエンターテイメントにおける「敵」と「味方」の線引きをきっかりできそうにない、きわめて複雑な人間関係にこそ、真実らしき物は宿り、敵味方ハッキリしている物の方が危ういのであるという、まるでマンガ版「風の谷のナウシカ」のような話である。とりあえずきっちり落とし前を付けようとする福井晴敏節の基本はある。
ん?そうかんがえると、コレもそんなにわるくない話だな。
ただ、やっぱりローズダストのエピローグにはどうも賛同しかねる。あまりにも素晴らしすぎる「月に繭、地には果実」やイージス、ローレライのエピローグに比べて、コレはもうちょっとなんとかならないのかと...あまり言うとネタバレになっちゃうので、これから先は読まないで欲しいのだが...
エピローグで感慨深げに景色を眺める君の胸には、ぶらぶらとナイフが未だ突き刺さったママなのだよね?これは、文章だとまだよくイメージできないかもしれないけど、そのまま映像になった場合、かなり間の抜けた絵柄になって観客に写るのではないかと思ってね。
最後にひとこと。本書のオビには「もはや映像化不可能」と言う意味のあおり文句が書いてあったが、そんなことはない。少なくとも平成ガメラ3を作り上げることのできる優秀なスタッフがいるのだから、十分映像化は可能だ。
むしろ「ハサミ男殊能将之とか「人形館の殺人綾辻行人の方が不可能っぽいが....あ、ハサミ男は映画化されてら〜!びっくり。
でも、まあ、ローズダストにかんしてはまだまだたくさにいたいことがあるのだけれど、とりあえずまた思い出したら書きますんで、このへんで。
というと、ひょっとしたら福井版戦国自衛隊の方が、寺田君の挿し絵も怒迫力で入っているし、お買い得なのかもしれないと、ふと思いました。
...スミマセン、どれもこれも、全部図書館から借りてますので、一冊も持っていませんけど....いや、ほんと、スマン。

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(上)

Op.ローズダスト(下)

Op.ローズダスト(下)