「マルドゥック・スクランブル」冲方丁

冲方丁に関する勘違いその一。
ご存じ冲方丁である。でもコレを読むまで冲方丁って「うぶかたとう」って読めなかった。てっきり「うぶかたてい」とよむのだとおもっていたので、図書館の検索調べてもヒットしなかった。
勘違いその二。
タイトルも「マルドック・スクランブル」(ちいさな「ゥ」がぬけてる)だとおもいこんでいたので、図書館司書さんにさんざん調べてもらってもわからなかった。そんな勘違いを経てようやく借りて読んだのだが...
勘違いその三。
裏表紙のあらすじに「少女娼婦バロット」と書いてあるところを「少女娼婦パイロット」だとばかり思いこんでいたので、美少女が戦闘機を乗り回して敵をガンガン打ち落とす話だと思いこんでいた。この本の初版が2003年だから、今まで丸三年間そう思いこんでいた。ちなみに「バロット」は主人公の名前。もちろん戦闘機などは操縦しない。
賭博師シェルに爆殺されそうになったバロットは間一髪のところをネズミのウフコックに助けられる。このネズミがまた何にでも変形できるバビル二世のロデムみたいに結構使えるヤツで、彼とのコンビで自分を陥れたシェルを追いつめていく。大やけどを負った彼女の皮膚は新技術で移植された人工皮膚に取って代わった。これまた便利なもので、周囲の電機器具に干渉することによって自由に操ることができたり、ネットにアクセスして情報をハッキングしたり、まあ万能的にいろいろデキルのだ。ココまで来れば「ああ、サイバーパンク小説ね」と思いこんでしまう。
↑勘違いその四。
途中とラストに宿敵ボイルド(ネズミの元相棒)との激しいバトルがかなり続くが、その辺SFっぽいが、この小説は間違いなく「ギャンブル小説」である。阿佐田哲也大先生の麻雀放浪記しかり。カイジやらアカギやらと同じ「博打物語」なのである。早川文庫だし、表紙のイラスト見てもそんなことにはとても気がつけない。コレには正直ぶったまげたが、またこの博打シーンがめっぽうおもしろいのだ。「堕天録編」に入ってから、悩んでばかりいてろくに話が進まない、つまらない変則麻雀を延々読まされる「カイジ」より、あきらかに100倍はおもしろい。敵組織の経営するカジノに行き、そこに鎮座する「100万ドルチップ」4枚をギャンブルで合法的に奪い取ろうというのだ。その100万ドルチップの中には賭博師シェルの悪事の記憶が記録されているのだ。
カジノのディーラーがまた、かなり人間離れしたヤツラが平気でぞろぞろ出てくる。いい加減にしろと言いたくなるような反則技ばかり使うディーラーばかりだ。もっともバロットも反則技を使うのだが...自在にルーレットの出目を操るのは当たり前。あげくラストに出てきた大物ブラックジャックディーラー、アシュレイに至っては、相手のカードの選択をあらかじめ予測して、すべてを自在に操る男だ。あまりに圧倒的な敵にどうやって勝つんだろうと思っていた。何せソレまでの勝負で資金は潤沢にあるのだから、掛け金の最低額が無きに等しい状況では、延々勝負して相手の疲れを待つ「東一局52本場@阿佐田哲也戦法」でもするのかなあ〜などと考えていたら、敵は延々「引き分け」作戦ですべてのカードの動きを支配していることを強烈にアピールしてくる。バロット大ピンチ!!
そしてこの勝負の結末は「やられた!!」と思うこと間違いナシだ。
ネタバレになるので書かないけど。数々の自分の勘違いにもかかわらず、全三巻一気に読めるおもしろさである。ところでジャンル的に「ライトノベル」でいいんでしょうか?コレ。
↑ひょっとして勘違いその五?