「ポルノ時代劇 忘八武士道」石井輝男

なにせ「ポルノ時代劇」だし、なにせ原作はあの「子連れ狼」の小池一夫だし、それだけでかなり怪しい雰囲気一杯なのだが、そこへ主演は、今でこそ霊界のメッセンジャーであるが丹波哲朗ときたものだから...合掌。
ついでにみんなのアイドル「アンヌ隊員」ひし美ゆり子さんまで、全裸で体当たり演技している。コレはファンならずとも必見の一作である。
本編ははじめからむっちゃくちゃで、原作者である小池一夫のとんでもないハイテンションテイストと、これまた妙に映像美なのだが、やたらとマネキンの腕やら首やらが血しぶき上げながら宙を舞い飛ぶ石井テイストがあまりにはまりすぎている。そして伊吹五郎などの名優が脇を固めているのだから、おもしろくないわけはない(てか、よくこんな映画に出演したな)
これで本編わずかに80分のいう尺がいい。コレより長いと、飽きちゃうって。ゲップ。「忘八」とは、八犬伝でお馴染みの、人の道を説いた「仁義礼智忠信孝梯」をすべて否定して、自らの利益のみを追求する生き方であり、吉原遊郭の必定であった。主人公人斬り死野(だったかな?)は無敵の剣士であり、とあることからこの遊郭の首領の庇護下に入るの。そこで「鬼包丁」と呼ばれる妖刀を授かり、鬼神のごとき殺戮を繰り広げるのだが...忘八武士道というタイトルに反し、案外忘八ではない人斬り死野であり、遊女に情けをかけたり、太鼓持ちの壮絶なる焼死に怒ったりと人間らしい面も見せる。
ポルノ時代劇と称するだけあって、裸満載ではあるが「全裸美女軍団新年のご挨拶」「全裸美女軍団VS忍者」などなど例によって「なぜ裸なのだ?」(ポルノだからさ)といういらぬ詮索を一切無視する力業演出が、いかにも油の載りきっている若き石井監督の真骨頂であろう。これだけ裸体美女だらけにもかかわらず、裸に興奮するというより...脱力してしまう。
また湯屋のシーンなどは、まるで千と千尋の神隠しを彷彿させるセットだったりして、巨匠宮崎駿もキットこの映画を見ていたに違いない。....?
かなり楽しめた。今まで見た石井作品の中でも屈指の出来だ。素晴らしい、ブラボー。一言いわせてもらえるなら「ポルノ時代劇」というサブタイトルはいらんでしょう。ま、その辺も制作当時の時代性があったのだろうが。
こんなにカッコいい丹波哲朗を見たのは初めてだ。改めてご冥福をお祈り致します。
はまぞうで見つからないので、こちらを参照↓
http://forest.kinokuniya.co.jp/ItemIntro/55437
買っちゃおうかな....