喜納昌吉の店

沖縄まで来たのだから、沖縄名物の民謡酒場へ是非行かなくてはと意気込んだ。意気込んだのはいいが、沖縄観光名所の国際通り沿いには沢山の民謡酒場があったので、一体どこへ入ればいいのかわからなかった。わからないことはわかる人に聞くのが一番。とりあえず観光客が来そうもない通りの酒場へ入り、泡盛飲みながら、ソコのマスターに聞いてみた。
喜納昌吉の店が無難でしょう」
ソコなら今泊まっているウイークリーマンションからすぐ目と鼻の先だ。うーん喜納昌吉か...一時ハマッテ聞き続けたこともあったが、最近はあまり聞いていない。むしろ地元の名もない名手のようなモノはないかと...悩んでもしょうがないのでとりあえず行ってみた。喜納昌吉の店とはいっても、本人が毎日出演しているわけではない。現在国会議員だったりするから、ソレは無理だろう。その代わり、彼の父の喜納昌永がほぼ毎日やっているようだ。喜納昌吉のお父さんのライブ...コレはひょっとして、いいんじゃないか?他の民謡酒場とは若干高めのライブチャージなのだが、高鳴る胸の期待を押さえながらそこへ行ってみた。
二度とイカねえ!!
いやーびっくりした。なにがびっくりしたって、数十分ほどの短いステージだったにもかかわらず、そのうち二曲は飛び入りのシロウトのカラオケを聴かされるハメになるとは、夢にも思わなかった。
しかも、音痴。
時間も遅く最終ステージだったためか、お客さんもかなりまばらで、自分を含めて15人くらい。そのうち10人くらいは団体さんで、前回ステージから居残りで見ているようだった。喜納昌永とそのグループ3人のメンバーが出てきて、司会兼歌手のお姉ちゃんが左手にタンバリンを持っていたときに、ちょっといやな予感がしたのだが...喜納昌永はちゃんと三線もってはいたが、スピーカーからカラオケが鳴りだしたときもちょっといやな予感がしたのだが。それでも彼らが唄っているときは、それなりによかった。数曲が終わった頃...
「それではこれからカラオケコーナーです」
いや、まさかと思った。喜納昌永からしたら、自分の三線をバックにカラオケで歌を歌えるというのは最高のサービスだと考えたのだろうか?しかしちょっと考えてみてくれ。沖縄民謡が好きで、沖縄まで来てしまった人がだよ、ナニを好きこのんでお金を出して、シロウトのカラオケを聴かなきゃならないんだ?カラオケならカラオケスナックに行っているよ。自分は喜納昌永の歌が聴きたくてここに来たのだよ。
先の10人くらいの団体さんが全員ステージに上がって(シロウトがステージに上がるんじゃねえ!!)「島唄」の大合唱....てか、合唱になってない。若干「オレ、この歌、知らないんだよね」の声が聞こえる。んなら、リクエストするな。はらわたが煮えくりかえってきた。自分は一体何故ココにいるのかと、疑問に思った。その間ちょっと演奏一休みの喜納昌永が目の前でいすに座っていた。フト自分と目が合ってしまった。あまりに腹立たしかったので、そのまま目線をそらさず、ガン付け状態に。そこでようやく島唄が終わって「さあ次の曲は『花』です、どなたか唄ってくれますか」と無神経な司会のお姉ちゃんが言う。するとナニを勘違いしたか喜納昌永、ガンたれていたのを「オレに唄わせろ」と勘違いしたのか自分の方にやってきて「さあお客さん、唄ってください〜」とご丁寧にご指名してきた。
アホか〜このオヤジ!!
だから、自分が唄いたかったらカラオケスナックに(以下同文)
断固拒否。どうもそう感じたのは自分だけではなくて、この団体が「島唄」と「花」を唄っている最中に、残った少ないお客もほぼ帰ってしまった。かわいそうなのが、この団体が唄っている最中に店に入ってきた二人連れのカップル。五分もしないうちに、頼んだビールを半分飲まずに帰ってしまった。よほど腹に据えかねてしまったのだろう。
とにかくいろいろ楽しかったことのあった沖縄での仕事ではあったが、唯一これが汚点であった。この屈辱を胸に、明日からもっと強くなってやるんだと心に誓った自分であった。
ま、楽しかったことは、また日を改めて書きます。