「逆転世界」クリストファー・プリースト

最近ハマリ気味のプリーストの初期作品。時間と空間がゆがんでいる世界で、常に大地を北へ移動している最適線を目指して移動する巨大都市。ソコに住む主人公は成人したときその都市の運行を支配するギルドの一員となり、外の世界で仕事するようになる。
移動する巨大都市っていうことで「あ、コレは『キングゲイナー』のエクソダソのモトネタか?」と思ってしまったが、ぜんぜん違った。たしかスペースマシンの後書きに書いてあったと思ったが「安部公房のようなシュールな世界観な物語」というのがぴったりだ。
この都市を離れて、南へ行くことは「過去へ下る」と言われ、都市の人間が南に行けば行くほど、時間は相対的に早く過ぎ、南から最適線である都市へ戻ったときには自分以外の時間が猛烈に過ぎ去ってしまった後になる。逆に北へ行くことは「未来へ上る」と言われ、今度は逆に時間はゆっくり進む。北の地域で数日間を過ごしたとしても、都市に戻ったときにはあまり時間は過ぎ去っていないというのだ。
そのような世界では人間は生きていけないから、ソレがちょうど釣り合う「最適線」というところへ常に都市を移動させなければならないのだ。
ラスト近くに、この年が動くための動力の秘密を巡り、都市の「移動派」と「停止派」が対立し始める。そしてゆがんでしまった世界を元に戻すことができるのであろうか。
といった話。
例によってプリーストの重〜い雰囲気たっぷりなのだが。割とこういった異世界物好きだな。前も書いたがバローズのアメリカンな異世界物も好きだが、いかにもイギリスっぽいところがプリーストの妙である。だいたいアメリカンロックよりイギリス発プログレッシブロックの方が自分は好きなのだから(←あまりかんけいない)
この手の文庫版のレトロSFものの蔵書があまり充実していない地元図書館はちょっとけしからん。今度この辺を中心に、多めに購入リクエストでも入れようかと画策しよう。何せ、グレッグ・イーガンは「宇宙喪失」一冊しかないんだから。
いや、何お話しだっけ?とりあえずプリーストはイイみたいだ。モチロン万人向けではないので、ソコントコヨロシク。

逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)