「青銅の魔人」北村想

江戸川乱歩ではないのだよね。北村想はこの前作に「怪人二十面相・伝」というのを書いていて、コレは二十面相目線から見た「裏少年探偵団シリーズ」(シリーズったって、コレと本書の二冊しかないけど)なのだ。
二十面相目線から見ると、ここに出てくる敵役の二代目明智小五郎(初代小林少年、初代明智探偵の死後に二代目を襲名する)は、やっかいこの上ない存在だ。
この初代小林少年たる二代目明智小五郎と初代二十面相はの(ああ、ややこしい)抗争の上、初代小林少年は重症をおい、初代二十面相は生死不明となった。時は終戦直後、初代二十面相とサーカスで出会い師匠と慕う少年、平吉が主人公の物語は、やがて彼が「二代目二十面相」と名乗り「二代目明智小五郎」を名乗る初代小林少年(ややこしいんだが、このいつが「二代目小林少年」をスカウトしてきて第二期少年探偵団を作ってしまったのだから)このふたりが舞台を市中にもとめ、劇場型犯罪の公演をこれから競い合おうというお話しだ。
読後感としてはとても長いプロローグのような本書。この続きが是非読みたいという人はポプラ社の少年探偵団シリーズをコンプリートすることを勧める。
初版は1991年だから、今頃何でこんな古くさい本を読んだか...実際図書館では書庫でほこりにまみれていた。実は本書の前作に当たる「怪人二十面相・伝」は発売間もない頃に読んでいたのだ。それから十年以上経った今頃にその続編があったことを知ったので、今更ながら読んでみた。あきらかに期を逸してしまったように思えるが、さにあらず。多分もうすぐしたら、あの「三丁目の夕日」シリーズを製作したことで有名になったロボットっていう会社が(会社名がうろ覚えでスマン)次回作としてあげているのがこの「怪人二十面相・伝」なのだ。そして監督が佐藤嗣摩子さんなのだ。
え、佐藤嗣摩子監督ってだれ?...という人へ...エコエコアザラクを初めて実写版映画にした監督ですよ...今ではエコエコアザラクっていうといろんなバージョンがあってワケ解らないけど。あとテレビ版「動物のお医者さん」の監督もやってます(確か一話くらいは「三丁目の夕日」の山崎貴監督が演出やっていたと思ったが)
江戸川乱歩といえば「元祖BL」(そうなのか?)なので、ここは小林少年と明智探偵との耽美な世界とかがめくるめく映画になるのでは(←イヤ〜ソレは微妙だな)
あああああと、大事なこと思い出した。佐藤監督といえば確か稲垣吾郎主演のテレビスペシャル「陰獣」を演出したんだった。陰獣だよ、陰獣。ATOKじゃ一発変換できないよ(←おいおい)江戸川乱歩っぷりは筋金入りだから、かの実相寺昭雄監督の名作「屋根裏の散歩者」や「D坂の殺人事件」を超えるような官能美あふれる作品に仕上がることを、心の底から期待する!!
...すみません〜本書はそんな官能美あふれる作品ではありません。
というわけで、遅まきながら「怪人二十面相・伝」の続編を読んでみました。とても短い作品なので、二冊まとめて映画一本分なのではないか?
だいたいポプラ社明智探偵って、ラストに少年探偵団員を集めて「明智探偵バンザーイ」と称えられて終わる話だろ?舞城王太郎じゃないけど、そんなもんクソ食らえ。「二十面相バンザーイ」って人は必見。「屋根裏の散歩者」や「D坂の殺人事件」で悪魔のような脳細胞を駆使して事件を解決した明智小五郎とは似てもにつかない晩年のていたらくな明智、実は密かに初代から二代に代がわりしていたためだという新説こそが、この小説の言わんとしているところだ。
ソレはつまりいつの間にか人類の味方となってしまったゴジラの様だと思ってもらえればいいだろう。後年、ゴジラがめでたく大悪役となり、平成の映画界に君臨(悲しいかな君臨はしていないな)したように、二十面相にも光あれ!!
....今回はあんまり書評の体をなしていないな(←いつものこと)

青銅の魔人―怪人二十面相・伝

青銅の魔人―怪人二十面相・伝

あ、AMAZONで画像がないや。大丈夫映画化されたら再販されるはずだから。
あと自分の書いた過去ログでスマンが、結構おもしろいこと思うので読んで。

http://d.hatena.ne.jp/idonokaibutu/20050731
稲垣吾郎は、やっぱ稲垣足穂からきているんだろうなあ...