「獄中記」佐藤優

もうすっかり過去のことであり、禊ぎ落とした鈴木宗男氏もめでたく国会議員に返り咲きできた今日この頃。そういえばあのとき「外務省のラスプーチン」と呼ばれ、鈴木議員と一緒に逮捕された高官がいたっけなあ?
そのくらいの記憶しかない佐藤優の、まさに東京拘置所をつづった獄中記。保釈を拒み512日間における拘置所生活はまさに修行僧のごとく。差し入れされた難解な書物をひもとき、外国語辞書と格闘し、キリスト教文献にて神学研究する日々。
国策捜査。本書で何度も登場する言葉だが、正直全く知らなかった。本来日本には存在しないはずの政治犯。まあ政治犯はいないけど「あいつじゃなだな」と言うヤツを、過去にさかのぼり微罪をうまく構築して、背任と言う罪で逮捕拘留する琴で政敵の政治生命を抹殺すること。つまり現政権が検察に「あいつ捕まえて」と指令すれば、どんな人物をも逮捕拘留できる。ソレを行使することが「国策捜査」ってことだ。
そんなわけで外務省キャリアの職を失した作者だが、その獄中生活を事細かに記録して、出獄後めでたく出版されたのが本書だ。
というか、ホントあまりに過去のことであり、鈴木宗男氏が国会議員に復活した時点で、今荒蒸し返してもなあ〜という思いもあるが、そうはいっても国策捜査というある種不条理な自体に放り込まれたまれた作者にしてみれば、一言いわせてもらいたいところであろう。
声高々に国策捜査を批判することも多く書かれてはいるが、むしろ獄中で日々研究しているドイツ語やヘブライ語チェコ語、あるいは神学研究のことの方により多くのページが割かれている。もうすでに作者は外務省をはじめとする政治と外交の世界から遠ざかろうとしているように思わせておいて、実はこんな不条理な状況に陥らせてしまった外敵に対するルサンマチン満載ではないか?
一見俗世を離れた修行僧に思わせておいて、やはり心は折れていないのだ!いけ、佐藤!!戦え優!!不条理な高官どもに正義の蹄鉄を今こそ振り下ろすときである!!
どうでもいいけど、今googleで検索したら「ルサンマチン」ではなくて「ルサンチマン」だった。長い人生今まで間違って覚えていたよ(←ホントどうでもいいな)
どうでもいいことをもう一つ。
どうも自分は「獄窓記」と間違えて「獄中記」を読んでしまったようだ...自分的にはよくあること(例「モンテクリスト伯」と「ジャン・クリストフ」)なので、いまさら気にしないことにした。

獄中記

獄中記

ちなみに...
獄窓記はこちら
獄窓記

獄窓記