「獄窓記」山本譲司

先日コレと間違えて「獄中記」をかりてしまったので、今回はちゃんと読んでみた。
やはりこちらの方が格段におもしろい。どうも獄中記は上から目線が気になって仕方なかったのだよ。でも獄中記もおもしろかったけど。
こちらの作者は山本譲司。まるでどこかの演歌歌手のような名前だが、苦学して菅直人の秘書から東京都の区議会議員を経て、見事衆議院議員となった立身出世の先生である。その後なんかいろいろあって、政策秘書の給料疑惑から逮捕拘留有罪収監とお決まりコースで刑務所へと....議員から罪人へ...天国から地獄へ...
人生ジェットコースターである。
そこであてがわれた懲役というのが、まあ、これが比較的模範囚が担当するといわれ、かのシミケンこと清水健太郎氏も担当していたという「刑務所の中のチョット大変な人たち」のお世話がかりである。刑務所の中にも高齢で認知症にかかっている者や、あきらかに精神に異常をきたしている者、あるいは障害を持ち懲役に服すことが難しく、介護を要する者たちがいる。そんな彼らを介護をするのだ。
同じ刑務所内でも「あそこは大変だ」といわれるくらい過酷な環境。何で模範的囚人が担当するのか?そのくらいの人でないととても勤まらないからであろう。
「地獄の釜の底の下」である。
そんな中でもヒューマニズムにのっとり、全身ウンコまみれの囚人たちを清潔にしたり(誇張ではない)必死で懲役を果たす作者には頭が下がります。というか、絶対刑務所へは行きたくないと決心させてくれる一冊だ。
万引きしてはいけませんとか、人に迷惑かけてはいけませんとか子供たちに教えるより、どんなにエライ国会議員先生でも、逮捕されるとこんなところに入れられるんだよ!!と教える方が説得力がある。前の読んだ「獄中記」と決定的に違うところは、獄中記では作者は拘置所にずっと入りっぱなしで、刑務所に入っていないことだ。一般的には「拘置所」と「刑務所」って区別がつきにくいところだが、拘置者は主に未決囚と死刑囚が入るところで、懲役が決まったら入るところが刑務所。刑務所では懲役ってことでいろいろ仕事をしなければならないが、拘置所の未決囚は、ひたすら拘置所内の個室で一人おとなしくしているのだ...たぶんこれで説明はOK?
そういえばこの二冊に書かれた時期ってのは、割と近いのではないか?多分獄中記の方が早いと思うが。あのころは、やたらと政治家の不祥事とか更迭が続いていたような気がする。「疑惑の総合商社」と揶揄された鈴木宗男議員が逮捕拘留された直後に、ソレを追求していた田中真紀子外務大臣が更迭。その直後。鈴木宗男を追い落とす急先鋒だった辻元清美議員も政策秘書給与疑惑でやりだまにあげられていたなあ...
本書の山本譲司元議員が逮捕されたのも政策秘書給与疑惑事件。その後も何人か政策秘書給与疑惑事件で「こいつは怪しい」ってのが...怪しいというより、モロやっているでしょうが...沢山出てきたけど、誰も実刑判決を食らった者はいないと思う。
山本譲司元議員ひとり貧乏くじ?
そうはならないよう、これからもどんどん出版を通じて世の中の矛盾をさらけ出して欲しい。ガンバレ山本譲司元議員。応援もかねて、何冊か出ている本も読んでみようと思う。

獄窓記

獄窓記