「ヴァーミリオン・サンズ」J・G・バラード

idonokaibutu2009-04-20

http://www.asahi.com/obituaries/update/0420/TKY200904200043.html
まさか訃報がでたとは。
実は先週の日曜日にこの本を読了したばかりだったので、あまりのタイミングにビックリした。もちろんすでに絶版ではあるが、この機会に再販されるといいなあ。げっ!Amazonの中古で初版帯付きが¥4,000-だって。↓
http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4150106916/ref=dp_olp_used?ie=UTF8&condition=used
ちなみに自分は近所の古本屋(ブックオフ系列ではない、まっとうなところ)で¥50-で買ったよ〜(@_@)〜もちろん初版、帯付き。いや、チョット待て。確かコレは最初にハヤカワ海外SFシリーズとしてハードカバーで出版されたのじゃなかったっけ?文庫でこの値段ならハードカバーはいくらやねん。
この本をはじめて読んだのは20年ほど前のことだ。当時は東京の南阿佐ヶ谷に住んでいて、仕事を辞め帰郷する直前で、田舎暮らしに向けて自動車免許を取得せんと悪戦苦闘していた。その際、教習所での待ち時間にコレを読んでいた。当時はまだ若く、思慮も浅かった自分には、イマイチ理解できなかった覚えがある。そして現在。立派な文学中年(←おいおい)となった今、再び読んでみた...
やっぱ、よくわかんなかったです(←おいおい)
イヤぜんぜん訳がわからなかったのではなくて、自分には何となくあっていないのかなあと...そんな中でもおもしろいのもあるわけで...自己増殖する謎の金属でできた音響彫刻が放つ怪音に悩まされるバーミリオンサンズの住民が、我慢の限界が来てその音響彫刻をたたき壊して溶鉱炉にぶち込むのだが、さらなく厄災が住民達に襲いかかるのであった!!
いささか三文小説的だ。いや本編はもっとバラード風情緒にあふれているのだが、自分が要約するとこんな煽り語りになってしまうのだ。全く自分の性格のなせる業である。
バーミリオン・サンズ。それはバラードが作り出した架空のリゾート。近未来のサンフランシスコ的な土地であろうか?近未来といってもそこはかとなく70年代風というか昭和レトロっぽい味わいがあるのだが、そこはこの作品が書かれたのが50年代なので、立派な近未来なのだ。そこで繰り広げられるSFチックなハイソファンタジーといったところだ。いや、一生懸命おしゃれに解説しようとするのだが、どうも文章が変だな、自分。
象徴的な物体がそこかしこに登場する「音響彫刻」(文字通り音響を発する彫刻)「向心理性素材」(持ち主の心理を読み取り、自在に変化する物質を使った『服』とか『家』)「詩編自動制作コンピューター」「クラウドスカルプチャー」(雲の彫刻)などなど。むしろこういった奇妙な、SF的とはとてもいえないギミック達が、本当はバーミリオン・サンズの主役達であり、それらを使いこなす、あるいは振り回される人間達はオマケみたいなモノなのだよ。
そういえば昔読んだ日本だけ特別編集の「バラード短編集」(正確な書名忘れた)でも奇妙な物体アイテムが次々と出てきていたなあ...なんか懐かしいなあ...あれ、なんかひょっとしたら、バラードのことそんなにキライじゃないかもしれないな、自分。