ここ数日に読んだ本

「柿渋」今井 敬潤
 渋柿ではない、柿渋である。特定品種の渋柿を発酵させて作る。木製器の仕上げ剤。唐傘などの撥水剤。型紙の糊。漁網の保護などその用途は日本の根元文化に深く根ざしたものではあるが、戦後ラッカー系塗料、ナイロン網などにその需要が取って代わられ、今ではその製造元は数えるほどしかのこっていない。
 はずなのだが....どっこい日本の伝統文化はしぶとい。近年シックハウス症候群などで有機溶剤系の塗料や接着剤などがそれらのアレルゲンとして問題になり始めてから、俄然注目をあつめている自然に優しい日本古来の天然素材、柿渋。
 そういうわけで、職業柄かなり興味津々です。
 この本ですが、かなり専門的内容だったり、製造元の歴史(かなり記述にダブリがあるようにもおもえるのだが...)だったりして、入門的に読むにはかなり敷居が高いです。どちらかというとメーカーのサイトをいろいろ見た方が読み物としても面白いし、よくわかります。大学の先生が書いた本でしょうが、もう少しエンターテイメント性が欲しいです(←勝手なお願い)
「自転車旅行主義」香山リカ
 わりとすきな先生なので、図書館で見かけたときは借りるようにしている。本書だが、いつものように自身の関わってきた患者さんを例に取り、エッセイ風に書かれた物だと思っていたのですが、内容は哲学用語満載の記述で、正直何が書いてあるのかサッパリわかりませんでした。香山リカって奥の深い人だったのですね〜てか、精神科医だもんな〜お医者さんだもんな〜大学や研修医を経ないとなれないんだもんな〜普通頭いいよな〜
「トミーノッカーズ」スティーブンキング
 いや、ようやく読み終えました。足かけ何年かかったのだろう。コレも文庫本が出てすぐ買ったのだから...5〜6年博多医。自慢にならないが。
 初期キングにありがちなラスト「炎で物語を浄化して、未来は子供達に託す」といったもの。これでもかと言うくらい、ほとんどどうでもいいくらい、ストーリー進行とは全然関係ない個人の性格描写が延々続き、なにも事件らしい物が起こらない。コレを「好き」か「嫌い」かであなたのキング度がはかられます。ちなみに自分は嫌いではない(←微妙なものいいだ)あらためて「キング以前」と「キング以降」ではエンターテイメント小説(あえてホラーとはいわない)の作法が変わったのだと(個人的に)確信する。
 文章の端々に彼の前作「デッドゾーン」や「ファイヤスタータ」などの登場人物や関連語句があらわれ、これらの流れを汲む物語かと思わせるが...むしろ単なる楽屋落ちにすぎない。むしろ古き良き時代のSF関連用語がちりばめられ、そちらの方が思わず「にやり」」とさせられた。「アルテア4」(でた〜!!「禁断の惑星」このサイトの名前の由来)「クラトゥ」(地球が静止する日)「ザップガン」(ディックの小説)等々。そうか、キングはこんな自分のような者たちにこの小説を捧げているんだなと...大衆小説に見えて、実はかなりマニアック。
 キングの作品を次々読んでいたのはまだ20代の頃。ああ、あのころは楽しかったな〜(←おいおい)