TV版十二国記「風の万里、黎明の空」

 原作は特に厚くもない(屍鬼を読了後は大抵の本は厚さを感じなくなってしまった)上下二巻の本である。その気になれば一日で読み終えることができる。自分も確か2日くらいで読み終えた。これが30分番組で13回に分けて語られるのである。そりゃ展開が遅いよ。それだけではない。すでに読み終えた人ならわかるだろうが、この話は下巻の終了間際までドツボなストーリーなのだ。首は飛ぶし、リンチで股を裂かれかかるし、100年に渡り陰湿にいじめられるし...とにかく延々陰陰滅滅な陰湿話なのだ。原作本なら2日で読み終えるコトができるものでも、これがNHK放送時には週に一回、延々3ヶ月に渡って繰り広げられたのかと思うと...
 この話は最後の最後で、それはもう小説史上に残るであろう、爽快な胸のすく展開がある。そのためだけに3ヶ月間、タダひたすら耐え抜いた十二国記のレアなファンの方々、ごくろうさまです。再放送でまとめて観て良かった。自分にはとても3ヶ月も耐えられません。
 もちろんTV版も、これ以上はないという(水戸黄門と揶揄されといるが)ラストに溜飲が下がりまくり倒しました。なんといっても原作は講談社エックス文庫。小野さんも大人向け小説ではかなり陰惨なラストが多い中、そこは読者の少年少女たちの夢を壊すような展開にはしない配慮が...そんなことを考えるような先生じゃありませんね、小野不由美先生。
 中途半端に製作が終わってしまった原因に、やはりこれら残酷描写がNHKらしくないなどという中途半端な配慮が関わっていないことを願う。祈願製作再開。せめて「図南の翼」だけでも...