「非現実の王国で」ヘンリー・ダーガー

 「もう〜またあのグランデリニアの悪魔将軍達につかまっちゃったヴァイオレットなんだけど〜馬鹿な大人なんかネズミで怖がらせたスキにちょちょいのちょいで逃げ出してやったわ。そう簡単につかまってたまりますか。こら〜グランデリニア!!ヴィヴィアン・ガールズのヴァイオレットが、月にかわってお仕置きよ〜」
 「非現実の王国で」は一言でいうとこんな話なのでしょう。作者のダーガーはヒッキーな人である。会話といえばお天気のことばかり。人と全くコミュニケーションがとれず、職場と部屋を往復するだけで年を取っていき、孤独のまま死んでいった。都会の片隅によくありそうな悲惨な老人だったが、話はここで終わらなかった。全く身よりのなかった彼の死後、貸していた部屋を片づけようとした大家さんは、その部屋の中でとんでもないモノを見つけてしまった。「非現実の王国で」と名付けられた一万ページを悠に超える物語をつづった自家綴り製の本だった。そしてその挿し絵であろう膨大な量の絵画。これが彼の孤独な老人が、その一生を費やして構築してきた架空の大楼閣、非現実の王国なのである。
 その内容は子供たちを奴隷にし、拷問し、虐殺する残虐な男たちの国、グランデリニアとの死闘を繰り広げる、7人の美少女戦士ヴィヴィアン・ガールズの物語。セーラームーンみたいなものだ(?)その絵は牧歌的というか、懐かしいぬりえ的というか、ただのヘタというか...しかし、とにかくすざましいまでの絵あのである。かわいらしい女の子たちがグランデリニア軍につかまり、肺や腸が引きずり出され虐殺される様子が克明に描かれていたり、窮地に立たされたヴィヴィアン・ガールズがなぜか全裸になって脱出に成功したり、しかも全裸のヴィヴィアン・ガールズの股間にはなぜかチ○コが?アンドロギュノスだったのか?
 股間の一物についてはこの本の帯に説明がしてある。

極端に孤独な生涯をおくったダーガーは男女の性差さえ知らなかったらいい。彼の描く少女たちは、ペニスを持っていたのである。
痛い、痛すぎるダーガー。
 こんなむちゃくちゃな人生はイヤだ...いや、少なくともダーガー本人にとっては、コミュニケーション不全の現実世界より、この「非現実の王国」の方が現実だったのかも知れないが。
 作品社より出版されているこの画集は¥6,500-と高めなので図書館で借りてきましょう。一様芸術書なので、多分大抵の図書館に入っていることです。もしなかったら、入れてもらうよう司書に交渉しましょう。彼の描いたヴィヴィアン・ガールズの絵。一万ページもあるので全部のせられるわけはない「非現実の王国で」からの抜粋。ダーガーの人生と絵の解説が掲載されています。間違っても本屋で買って、自分の本棚に入れたりしないでください。夜中にうなされること、間違いありません。しかし、必見。
 そういえば昔2チャンネルをうろうろしていたとき、アドレスが書かれていたのでクリックしたら、日曜朝に放送されているようなアニメ絵の女の子が、非道い虐殺されている様子を、これをまたエライへたくそで稚拙な絵で丹念に描かれているところに飛ばされてしまい、ゲロゲロな気分を味あわされてしまった事があった。そんな絵の作者も老衰して死ぬまで引きこもって、どこにも発表せずそんなグロ絵ばかり描いていて、死後それらが発見されたら、アーティストと呼ばれているのかも知れない。
 そんなことは絶対ねえから、イイカゲンニシロコノクソオタク。