文芸春秋三月号 

 買ってきました。芥川賞二作品一挙掲載。毎回思うのだけれど、芥川賞って、こんなに薄いの?と訊きたくなるくらい少ないページ数である。これを他に短編を加えることによって一冊のハードカバー定価¥2000-くらいに仕上げてしまう出版会社のしたたかさには脱帽してしまう。図書館には「芥川賞作品集」として全集が十数巻にわたってでているが、一冊につき二段組で十話近く収録しているのには「えらい」と思わず膝を打つ。
 本編はまだ読んでませんが、とりあえずその先行者、じゃなくて選考者の書評などで...

(「蛇にピアス」を評して) 永井荷風が晩年、若い頃にほどこした惚れた芸者の名前の入れ墨に往生して、銭湯に行く度トクホンの絆創膏を貼って出かけたという逸話はなにやら暗示的な気もする。石原慎太郎
 若い二人の受賞で出版不況が好転するのでは、という不毛な新聞記事が目についた。当たり前のことだが現在の出版不況は構造的なもので若い作家二人の登場でどうにかなるものではない。村上龍
 あまりにも的をえまくりたおしているので、参考文献として次年度教科書に載せてあげたいくらいです。石原都知事のは毎回えらく、それこそ受賞作より面白い批評ですけど。あからさまなマスコミ持ち上げモードにヘキヘキといった村上先生。ほんとマスコミってヤツはいい加減にしろ?そのうち出版不況は図書館のせいだとか言われたら腹が立つ。世の中には図書館しか楽しみが無い人間もいるのだ。え、そんなことを言っているヤツはいないって?あまいあまい。去年のある日、NHKの「クローズアップ現代」で図書館が著作権を侵害している、つまり図書館で大量に買い込んだ最新人気ベストセラー本の為に売り上げが落ち込んだとの問題を取り上げていたのだ。本末転倒だ。自分は昔出版業界に極短期間とはいえ(ほぼ4ヶ月)社員として働いた事があるからわかるのだが
「こんなマイナーな専門書一体誰が買うのかねえ?」「そりゃ日本全国に図書館が5000位はあるから、それぞれが一冊づつ買ったら十分ペイ出来るんじゃない?」
 つまり出版社と図書館は持ちつ持たれつなのだ。それをごく一部のベストセラーだけ取り上げて「著作権の侵害」など、カタハライタイワ出版業界。しかもベストセラーの行く末など、その賞味期限がすぎたら哀れ書店の本棚からは消え去ってしまうのだ。その点、図書館はそんな風潮どこ吹く風。人気有ろうが無かろうがA〜Zできっちり並んでいて、あまつさえパソコン検索で閉架になった本まで読み放題だ。ある意味、究極社会主義的。こんな所まで資本主義グローバルスタンダートがきてたまるか。図書館万歳。図書館ラヴ。
 ああああ、また話が芥川賞からえらくちがうところへそれてしまった。
 どちらにしろ「特異な人生とリアリティのある文章」という芥川賞、受賞のため傾向と対策ってはどうか?めちゃくちゃフィクションもOKってくらいな懐の深さが欲しい。とか、偉そうなことを言う前に、受賞作本編を読まなければ(←おいおい)