今日の都市伝説

 実演販売というのは、お客様がやってくるまでは、基本的にヒマである。そのヒマの間に何をしているかというと「実演」する。それだけでは退屈は紛れず頭の中ではいろいろなことがグルグル思考がループしている。
 そんな中ふと、昔聞いた実演販売で本当にあった面白い話を思い出した。この話の中に出てくる人たちにとってはシャレにならない事ではあるが、しょせん人ごと。噂話にしては面白すぎ。最初にいっておくけど、この当事者は自分じゃないです。どちらもその当事者、あるいはそれを目撃した人から聞いた話なので、信憑性はかなり高い。
 嫁入り道具の必需品「桐ダンス」の販売員の話
 基本的に実演販売の歳は、売り上げ金は全てデパートのレジを通して、いったんデパート側に入り、そこからデパートの取り分(売り上げの20〜35%が相場)を引かれて上で、銀行口座に売り上げが入金される。
 今日も新潟を遠く離れ、地の果てのデパートにて桐タンスの販売をしていた。今日の売り上げは、いつもとおなじくらい。タンスが一竿売れた程度ではあるが、初日からの売り上げを合計すれば40〜50万円はいっているであろう。今回も黒字決済となる。今日から後に売れた分は、丸々利益である。毎回こんなおいしい仕事が続けばいいのだけれど...と、物思いに耽りながら実演販売会場のデパートを後にする。
 すっかり日の落ちた後ではあるが、妙にこのデパートの回りだけ明るい。なぜ?見渡せばテレビカメラが並んでいる。その撮影用のライトがこうこうと光っているのだった。いったいこのデパートで何があるのであろうか?好奇心に駆られ、カメラマンに聞いてみた。
 「誰か有名人でも来るんですか?こんな夜遅くに、こんなにカメラが集まって」「え??知らないんですか?このデパート、今日経営破綻したんですよ」「はああ?」
 経営破綻...すれば当然資産凍結。売掛金も支払われず、今日の売り上げは、債権者の配当金のいう形で支払われるのみである。多分売り上げの5%も入れば上出来である。こんな事実も知らず、閉店までくそまじめに販売やってい我が身が恨めしい...
 現れない、ろうそくや
 デパートの始業時間は日本全国ほとんどが午後10時なのだが、それを過ぎても一緒に実演販売やっているろうそくやさんがやってこない。おかしい。昨日の物産展初日には閉店まで元気に仕事をしていて、帰り際「明日も頑張りましょう」と、売り上げ増進を誓い合ったのに。二日酔いか?体調不良か?それとも暴漢にでも襲われたか?
 不振に思いながらも、今日の自分の仕事を淡々とこなしていたが、お昼を過ぎても、夕方過ぎても全然出店する気配のない状況に不信は募るばかりだ。そうこうしているうちに、閉店時刻。とうとうやってこなかったろうそくやさん。心配も頂点に達しようとしたそのころ、当のろうそくやさんがとぼとぼやって来た。
 「どうしたんですか?心配しましたよ。なにか事故にでも巻き込まれたのですか?」ろうそくやさんは、苦笑を浮かべながら、吐き出すようにこう言った「いやーまいったよ、実は万引きやったら警備員につかまっちまって、今の今まで警備員室でお説教食らっていた」「え....」「今後、出入り禁止だって」「えっえ?」「これからすぐ販売会場から強制撤去しなきゃならないから」「えっえええ?」「これでお別れだ」「ええええええええ」
 どちらの話も当事者から聞いた話だから真実です。世の中には信じられない事がたくさんあるモノだ。