今日のバローズ

 さて「金星の魔法使」読了。といってもカーソン・ネーピアの登場する物語は100ページほどしかなく、その半分以上が「さい果ての星の彼方に」という短編である。短編なのだが、この調子で続けていけば立派なシリーズになりそうなくらい設定のしっかりした話なのだ。しかしそれは今まで読んできたバローズ作品の中でもっともどろどろした暗い作風だった。バローズ版「1984」である。第二次大戦で撃墜されて死んでしまった男が目覚めた所は、地球を離れること遙か45万光年の星ポロダであった。何故その星に到達したのかは一切説明されないが、そこは一世紀以上戦争状態が続いている世界であった。まるで旧ソ連を思わせるような密告と投獄、拷問などの恐怖政治が支配する国へスパイとして潜入する主人公タンゴールであった...普通ならここから手に汗握る冒険活劇が繰り広げられるのだが、そんなことは全くなく、やるせない重々しい雰囲気だけが延々続く物語である。シリーズにしなかったのはバローズも書いていていやになったからじゃなかろうか?
 ともあれこれで金星シリーズ読了です。続いて未だ読み終えていなかった「火星シリーズ」を再び読み始めようと「火星の合成人間」「火星の透明人間」を借りてきた。残念なことに市立図書館には「火星の秘密兵器」が蔵書されていないのだ。何とか読了したいのだが、いつになるか全く見込みが立たない。