宇宙戦艦ヤマト


 中古テレビを探しにリサイクルをさまよっていたときに、ブックオフでとんでもない本を見つけてしまった。ライトノベルの始祖朝日ソノラマの「ソノラマ文庫」栄光の文庫番号一番である「宇宙戦艦ヤマト」である。まぎれもなく日本におけるライトノベル第一号である。このブログでも「とんでもないヤマトのノベライズがある」と何度か紹介していたが、それがとうとう手に入った。正確には一度手放した本を再び取り戻したのだが...今回手に取ってみていくつか勘違いしていた自分に気がついた。そのもっともたるは「豊田有恒、著」だと思い込んでいたのだが、「石津嵐、著」であった。豊田有恒は原案であった。後「とある惑星でデスラーとヤマト乗組員が談笑」と思いこんでいたが、そうではなくてかなり険悪な状況でパーティー会場で邂逅したのであった。あと主人公の名前が「古代ススム」とカタカナ表記であった...
 全体的の印象は子供の頃読んだのと同じで、こんな暗くてドツボなヤマトはイヤだ...と言おう。どうせネタバレにしたところ、現在絶版で書店では入手不可能だからいいよね。つまりラストのおちだが、ドツボの暗さはとりあえず置いておくとして、なかなかSF的センスオブワンダーにあふれていたので書いちゃう。嫌な人は飛ばして...
 なんとイスカンダルのスターシャは惑星イスカンダル地下に張り巡らされたコンピューターであり、人間体のスターシャもサーシャもそのコンピューターが有機物質を合成して作り出した生命体であった。そしてその製造も解体もコンピューターの意志によって簡単にできてしまう。そして驚くなかれデスラー総統を始めとするガミラス人も全てスターシャが作り出した有機生命体であり、それはコンピューター、スターシャを守るために作り出された軍隊であったのだ。その軍隊が暴走を始め、地球やその他の星を侵略しはじめたものであって、例えデスラーとの戦闘で勝利し倒したとしても、また第二第三のデスラーが現れてくるだけの話であった。つまりおおもと(コンピュータースターシャ)を破戒しない限り宇宙に平和はやってこないのだ。
 この物語のラストだが、いかにも日本人的である。沖田艦長を始めとする、ヤマト乗組員生存者(船内破壊工作の為、数人しか生き残っていない)は古代と森雪二人をのぞく全員がイスカンダルへ体当たり特攻攻撃をかける。元を絶たなきゃダメってわけだ。
 多分これは松本零士参加以前のプロットであろうと思うが、テレビ版がこんな身も蓋もないストーリーにならずに本当によかった。松本零士先生の参加によりファンタジー色が強くなり、そして宇宙戦艦ヤマトは永遠の名作と語り継がれていったのだと確信した。ま、結局某プロデューサーと松本零士はたもとを分かち、その後、宇宙戦艦ヤマトは長期間の迷走に入ってしまうのだが...最近持ち上がっている新作ヤマト制作中の噂。本当に新作ができるのか見物ではあるが、どうなるのであろうか?