無料で差し上げますコーナー

 本当に唐突に掘り出し物が現れる、市立図書館の「無料で差し上げますコーナー」なのだが、同じように貰ってきた筒井康隆ベトナム観光公社」かなり面白い拾いものだった。実はこの本は高校生の時に読んだ事があるのだが、40過ぎて改めて読み返してみると、かなり印象が違ってくる。ショートショートの体裁はとっているが、そのほとんど全部に「オチ」がない。その辺が星新一に夢中だった高校時代には取っつきにくかったのだが...今考えてみるとメチャクチャブラックな内容なのに、結構楽しんでいた記憶がある。イヤな高校生だったのかもしれない。
 主に異星に行った地球人と現地星人とのディスコミュニケーションを扱った物がほとんどなのだが、ショートショートによくある「話のオチ」がまったくなく突然話が終わり、訳のわからないまま読者はストーリーからほおりだされる。その置いて行かれ加減が実にいいのだ。本書は第二作品集と銘打たれている。この瞬間にもすでに作家として完成されているのだが、このあともドンドン進化しく。そういえば青少年時代の自分は途中でついていけなくなってしまったんだ 。それで何年も読んでいなかったんだな筒井康隆。ようやく筒井に自分の読解力がついていてるようになったのだな。
 ちなみに最後に読んだ本は「パプリカ」初版を買って読んだから、そのころが最後。パプリカは完全にエンターテイメントしていて、むしろ近年のアニメにその影響が色濃く見られます。ウルトラマンティガの実相寺監督「夢」はあきらかにパプリカが参考になっているはずである。