「タイムマシンの作り方」

 恥ずかしながら広瀬正というSF作家がいたことを知らなかった。あとがきを読むと、SFの大御所、星新一よりも年上で、日本SF界の世話役的人物であったようだ。若くに急逝してしまい、作品も少ないので自分が知らなかったのであろう(と、いいわけをする)今回読んだ「タイムマシンの作り方」は彼の代表作。例によって近所の市立図書館の「無料で差し上げますコーナー」であったものを貰ってきた。昭和40年代の作品であり、表題どおりタイムマシン物を集めたショートショート集(なんか懐かしいジャンルだ)である。それほど目新しい内容ではないが、まだ星新一などが大活躍する前の作品であるから、この辺はそんな時代だったのだと納得する。
 コアなSFファン以外にはあまり知られていないが、この時間旅行を扱った「タイムパラドックス」物と、宇宙船に密航者がいて到着地まで船内酸素が持たず、どうする?といった「冷たい方程式」物がSFの二大テーマになっていた時代があったのだ。
 そういえば最近日本人SF作家といわれる人がいなくなった。SFの凋落は甚だしく、かわりにミステリー全盛である。ただSFテイスト満載のミステリーが多いので、現代では、そんな仔細なジャンル分けなどは意味をなさない時代なのだ。
 たまにはこんなほのぼのとしたSF小説もいいものである。