「珍世界紀行」

荒俣宏の「アラマタ図像館」を彷彿させるような写真集。ヨーロッパの各地に点在する蝋人形館など、妙な博物館を紹介した一冊。その昔、まだテレビも映画も写真すらなかった時代に、医学を志すものたちに教官たちは、こうしたグロテスクな標本や蝋人形にて詳しい病理の解説を指導していたのだ。また、エンターテイメントとして「死体解剖ショー」なるものが人気を博していたともいわれる(アラマタさんも言っていた)
数々の拷問器具の展示などは、人間の暗黒想像力がどこまで広がるのか実験しているのじゃないかと言う怖さである。「こんなもの見せられたら、それだけで全部白状してしまうよ」とは著者の弁。排除する対象には徹底的に厳しいヨーロッパの歴史を鑑みると、ライブドアでどうこう言っている現代日本人がとてものどかに見えるものだ。堀江社長を始めとする当事者にはそうはいかないだろうが。
あとは、蝋人形館のお約束、エロチックだ。今更説明不要だが、これについては世界共通。エロに言葉の壁はナシである。まだ20代の半ばの頃、勤めていた会社の慰安旅行で伊豆方面に行った時、観光バスが立ち寄った「伊豆秘宝館」同行の同僚たちは誰も行こうとしないばかりか「ナニあれ、最低」と女性社員からは入り口前ですでに最悪の評価をもらっていた。気の小さかった当時の自分は見たかったけれどもこの雰囲気じゃ...まあ、そのうち見に来る機会もあるだろうから、今回はパス...したのだが、その後20年近く経っている現在、再訪する機会に未だ恵まれていない。やはりあのとき行っていればよかったと激しく後悔している。

珍世界紀行

珍世界紀行

表紙の蝋人形のおしりがキュート。