「熊の場所」舞城王太郎

短編集。
短編とはいえ極力改行をさけ、これでもかとテキスト詰め込んだ本書。200ページを欠けるごく薄い本なのだが、例によって舞城王太郎ワールド爆発で内容は分厚い本に決して負けていない。青春見立て殺人ミステリ満載(でもないが)とりあえずいろんな青春模様が三本読めます。
熊の場所...恐怖克服するにはその恐怖を感じてからなるべく早いうちにすませておくコト。恐怖とお友達になろう。でもお友達はさらなる恐怖をキミにプレゼントしてくれる。ヤッパ怖いのでそういった人とは友達にならない方が絶対いいと思う。好奇心は子猫を殺す。
バット男...バットマンではなくてバット男である。例によって因果応報。困った女と結婚する困った男。困った結果になってしまう。コレもすべてバットの呪いであろうか?死んだはずのバット男も実は生きているようだし...そしてこれからもバットな因果は巡り続けるのであった。なにも解決せずに唐突に終わる。
ピコーン...って、すべてのコトがお見通しな彼女。奇妙な形で発見された彼氏の死体。真犯人は誰か?という王道ミステリの訳はカケラもなく、例によってほろ苦い青春物語...ではないな。じゃ何かというと、よくわかんない。主人公の彼女だけがかわいそう。でも間違いなく強く生き抜くタイプ。
さて、本書を読了した結論を言うと、ほとんど自分は舞城王太郎を理解していないらしい。その場その場で展開されてゆく過剰な心象描写に振り回されつつ「ああ、また今日も舞城王太郎を読んでしまった」と思うだけだ。いいんだそれだけで。あまり深く考えるより、その場その場で展開される舞城節をただただ読み続けるだけでいいじゃないか。ソレが舞城王太郎だ。
なんか最近舞城王太郎を悟ってきたのかもしれない、自分。

熊の場所 (講談社ノベルス)

熊の場所 (講談社ノベルス)