「あなたの人生の物語」テッド・チャン

窓際のテッド・チャン「る〜るる、るる、る〜るる〜♪皆さんこんにちは徹子の部屋です」こんなふうにいっぺんやってみたかった
さて、世間の絶大なる評価に反するように寡作作家。世界の新作への期待を裏切るように、たぶん世界一の寡作作家。これだけ各界のSF賞を受賞していながら、発表された単行本はコレ一冊しかない寡作作家。今のところ一体次の短編（いまだ長編は一作もナシ）がいつ発表されるか全くわからない寡作作家。そんな寡作作家、彼こそテッド・チャンである。
J.Gバラードを思わせる美しい文体で繰り広げられる特異な世界観。アイディア一発勝負とも誤解されそうだが...
もったいない。
実にもったいない。これだけのアイディアがあったらその世界観をふくらませて全十巻くらいの一大冒険物語ができるんじゃないか？そんなアイディア宝庫のような短編集。つまりアイディアを描ききったところで。作者の小説における創作意欲が萎えてしまうとでもいうのであろうか？もったいない。実にもったいない。
全8編の珠玉のストーリー。その概略はというと...
どこまでも伸びゆくバベルの塔をほうふつさせる「バビロンの塔」の頂上の行き着く先は一体？てっきり古代人の建設した軌道エレベーターの話かと思ったのだが、いきなり小栗虫太郎の「人外魔境」をほうふつさせるようなラスト。
アルジャーノンに花束をあげつつスキャナーズしちゃった「理解」
数学SF「ゼロで割る」ソレやっちゃおしまいだよ。
すべてはすでに決まっている「あなたの人生の物語」話せばわかる。もう最初からわかっていましたって。
多分ハガレン好きには一番取っつきやすい話「七十二文字」中世科学感がそのまま世界の理として成立している世界での、世界救済に奔走する科学者たちのお話。
「人類科学の進化」スミマセン、サッパリわかりません。自分は退化。
「地獄とは神の不在なり」お馴染み聖書における大問題「ヨブ記」の作者なりの回答。だと思うのだけど何せ自分にはキリスト教の素養が皆無のためイマイチ理解できなかった。でもおもしろい。神は存在する。でも神は何もしない。それどころか、かなり気まぐれ。天使が降臨して、降臨した地区に甚大な被害を与える（この辺エヴァ的）でもちょっとだけ奇跡を施す。天使降臨時にその光に満たされると、どんな大悪人も無条件で天国行き決定。コレ大問題。無茶な話だ。だいたい「ヨブ記」からしてむちゃな話だから...因果応報なブッディストにはヤッパわからないか...
人を顔で判断するな！！ソレはレイシズムだ。「顔の美醜について」だから人工的に顔の美醜を判断するコトをできなくなる処置をしよう。コレで世界平和だ（そうか？）
とまあ、こんなところです。訳がわからないという方は、すべて私の表現力の稚拙さに由来することでありますのでつつしんでお詫びします。最近ミステリに押されぎみで寂しくなってきたようなSFだが、がんばっている人はがんばっている。願わくばもう少し作品を発表してくれテッド・チャン。願わくば長編も...（願い多すぎ）

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)