「雷電本紀」飯嶋和一

相撲といえば協会を巻き込み兄弟喧嘩中の人を真っ先に思い浮かべてしまう今日この頃です。
そんなことはさておき本作品は現代日本の文壇においても一、二を競うような作家であるはず存在にもかかわらず、そのあまりにも寡作な状況に、まさに知る人ぞ知る作家となってしまい、「ソレがどうした」とばかりに我が道を突き進んでいるとしか思えない孤高の作家。かなりの読書通が尊敬と敬愛の念を禁じ得ない作家の中の作家、飯嶋和一の、かなり昔の作品です。何せデビューしてから十年以上経っているはずなのに、自分の知っているだけで五冊しか出版されていない。この調子では次回作がいつでるのか想像もつかない。しかも全作品が(スミマセン、自分はまだ三冊しか読んでいません)素晴らしいときたら、これを注目するなと言えるであろうか。全日本人は刮目して飯嶋和一に注目すべし。
あまりの寡作に加えて、直木賞などには全く無縁。しかし、読者が選ぶ今年のベストなどのでは彼の作品が出たら必ず上位に入り込むという、本当に読書を愛する人たちが推薦する作家なのである。
さて本作品は江戸時代に古今東西最強と言われた力士「雷電為右衛門」の一代記。
飯嶋和一独特の文体とでもいうのだろうか、会話は極力少なく、情景描写が中心に話が進んでいく。しかし情景描写だけで登場人物の心情までも見事に描写しきる筆力。
相撲の取り組み描写を文章で理解するには、ちょっと敷居が高いが...つまりラジオの相撲中継を聞きながらその情景が脳裏にうかんでくるくらいの相撲力(?)がないと、本書の相撲対決シーンは堪能できない。スミマセン自分も半分以上訳がわかりませんでした。
だが、そんなコトが子細に思えるほど、過酷な時代の理不尽な状況での相撲興行。一般庶民のよりどころは非日常的空間で連日仮想敵をなぎ倒す雷電に、日々の鬱憤を託すしかないのだ。
つまり、プロレスで観戦みたいなコトか...イヤ、違うんだって。そうじゃなくて...一体何が言いたいんだ自分。
あまり言葉を連ねて褒め称えようとしても、ますますドツボにハマるだけだからこの辺にした方がいいかもしれない。何でもいいから飯嶋和一読んでください。すばらしさに絶句します。
すると思うんだけどな〜多分。こんなに熱入れているのは自分だけかな〜そんなことはないはず。うん。

雷電本紀 (小学館文庫)

雷電本紀 (小学館文庫)