太陽は燃えていない

「熱いのは地球です。地球の地熱が熱いのです。そして太陽というのは実は鏡です。自分で燃えているのではなく、地球の発する熱を反射しているので燃えているように見えているのです。
引力というのは地球にしかありません。その証拠に宇宙には引力がありません。
人類は地球には行っていません。アポロの乗組員が月に立てた旗が風ではためいていたのが何よりの証拠です。
そして宇宙にも空気はあります。酸素もあります。
え、こんなことを言うと嘘だと思われますか?嘘ではありません。嘘か本当か誰にもわかりません。たとえば太陽は燃えているということを一体どこの誰が太陽まで行って確認してきたのでしょうか?だれもいってないじゃないですか。
だからこれが太陽が燃えていない証拠なのです。」
つい先日にちょっと外出して、久しぶりに昔なじみのスナックへ行った。娘には「ちょっと散歩に行ってくる」と言ったので、ほんの一、二杯。ほんの三十分ほど、顔みせ程度で帰ってくる予定だったのだが、この驚愕の宇宙観を突然マスターが自分に振ってきたので、自分のトンデモウオッチャー魂に火がついてしまった。
延々と「ソレは違う。確かに地球の地熱は熱いが、太陽はきっちり燃えている。核融合でエネルギーを出している。引力は「万有引力」と呼ばれるように、すべてのものは引力あります。宇宙空間にも引力の影響はもちろんあります。引力がないのは人工衛星の中。つまり人工衛星というのは永遠に地球に落ち続けている状態なので....」
なんとか説得しようと熱弁をふるったのだが、全く聞く耳を持ってもらえず、疲れ切ってしまう。気がついたら午前0時を回っていた。半分ほどあったはずのボトルの中の焼酎は、しゃべりすぎののどの渇きを癒すために、すべて飲み尽くされてしまった。
翌日は当然二日酔い。
ああ亜空間、宇宙観。
たまには健全に、若くてかわいい女の子が接客してくれるスナックへ行こうと、心に堅く誓う。