マッドさん

仕事中の夕方ころ「今テレビにオマエの知り合いが出てるが」とオフクロに呼ばれた。その番組は、ご存じテレビ東京の「なんでも鑑定団」だ。新潟では東京からかなり時間が経ってからの放送になるので、本放送からはタイムラグはある。だからかなり前のコトになると思うのだが...しかしそんな知り合いがいるってコト、自分がいつオフクロに話したのか全然覚えていない。親というモノは何故か子供の友人の名前をいつまでも覚えているモノなのかもしれない。
さて、20代を東京で過ごしていたときに、何人か非常に印象深い友人たちに出会ったのだが...この人その中でも彼はインパクトある人だった。美術学校時代の先輩なのだが、あだ名を「マッドさん」と言う。
「マッドさん」などと呼ばれるくらいだから、何かマッド的なことがあるのだが、彼の場合は「マッドコレクター」のマッドだ。専門分野は「アンティーク・トイ」ソレもおもに50年代くらいのホラー(フランケンシュタインやドラキュラね)と、横山光輝の大傑作「鉄人28号」モノだ。
まだ親からの仕送りで細々と貧乏学生している身分。その当時からコレクターアイテムの高騰は激しく、これら珍品はとても貧乏学生が買えるようなシロモノではなかった。なのに彼の六畳一間のアパートにはそんな入手困難なブリキの鉄人28号アメリカ、オーロラ社のホラーやモンスターのプラモデルが所狭しと陳列されていたのだ。最近はそういったブームなので、かなり再販されているモノも多いのだが、そんな軟弱な再販ものではなく、バリバリ当時の初版モノばかりなので、マニア垂涎のシロモノである。
どうやってこんなに沢山の高額商品を集めたのか聞いたところ「仕送りのほとんどをコレクションにつぎ込み、食費を切りつめて...」いたそうだ。彼は極真空手の有段者でもあり、見るからに筋肉隆々な体つき。自衛隊がほっておかないような体格で食費を切りつめることは、果てしない苦行であったと思う。そんな苦行あってのコレクションだったのだ。
学校の先輩ということもあり、自分も一時かなり影響されて、日本物のソフビなどを集めたコトもあった。しかし根本的にコレクター資質に欠ける自分は、そんな収集行為じたい続かなく(苦行きらいだし)東京から新潟へ帰る際にほとんどを処分してしまった。
この辺は未だに読んだ本を容赦なくブックオフにたたき売る所からも察せられる。
そんな懐かしい青春時代の先輩がテレビに出ているではないか。ソレも「鑑定団」ではあまりにハマりすぎだ。さて今回は一体何を持ってきたのだろうか?そのときの番組の特集が「青春時代のコレクション」若い頃に集めたお宝を鑑定してもらおうという企画。お宝は「禁断の惑星」のポスター....って、マッドさん、このブログのタイトルが「イドノカイブツ」って知ってのコト?(注、映画「禁断の惑星」に出てきた怪物の名前が「イドの怪物」なんですよ)ひょっとしてこのブログをみているのではないかと...
青春時代に食費をギリギリ切りつめて購入した禁断の惑星のポスター、当時十万円。現在一体いくらに値あがっているのか?鑑定するのはもちろん日本一のおもちゃコレクター北原さんだ〜!!
ドド〜ン「50万円です」やった〜!!!
売っちゃいましょうよ、マッドさん。50万円あったら、今の自分の根性なら一年は暮らせますよ(おい)
久しぶりにテレビで見たマッドさんの姿は、かつて極真空手で鍛えた面影がほとんど無く、何故か二回りほど細くなっていた。まさかとは思うが、いまだに食費を切りつめてコレクター道を極めんと日々苦行を続けているのであろうか?あるいは激やせするほどの大病を患ったとか....非常に心配になってしまった。
と、人の心配はしているが、コレクター道などはとっくの昔にあきらめて、普通の生活を物静かに過ごしたいと心から思っていた自分も、そんな思いとは裏はらの貧乏生活まっしぐらなので、人生なんて何だかわからないモノだなと。不惑を遙かに超えた年齢でも迷い続けているのであった。
もしこのブログをマッドさんも読んでいたら「お久しぶりっす。自分の娘ももう十歳になっちゃいました。結婚生活は八年前に破綻しました。娘の母はマッドさんも知っているひとですよ〜ん」とだけ伝えておきます。
さて「禁断の惑星」のポスターと、ブログのタイトル「イドノカイブツ」の間には何か因果関係があるのかないのか...もし読んでいたら、コメントしください、マッドさん。