「戦国自衛隊1549」福井晴敏

男泣き皆殺し作家、福井晴敏である。「6ステイン」以来、久しぶりに読んだ。相変わらずの力わざ文章で終局のカタストロフィは圧巻なのだが、今回の男泣き度はやや落ちる。その原因は....たった238ページでは薄すぎる。せめてあと1000ページくらいかけて執拗に人物描写を掘り下げてくれたなら、こりゃもう男泣きだよ。
さて同名映画の原作なのだが、半村良原作のリメイクである。半村良版「戦国自衛隊」といえば、現在ではすでに小説の一ジャンルとして分類しても全く差し支えない「架空戦記物」の元祖であることは間違いない。超常現象によって戦国時代にタイムスリップしてしまった自衛隊が、現代の最新兵器を駆使して戦国の世を平定し、気がついたらその部隊の隊長が実は織田信長だったという(あ、ネタバレ)という話だった(なにせ中学生の時に読んだので、詳細はうろ覚え)
福井晴敏版はもう少し掘り下げてあり、タイムスリップの原理もそれなりに、何となくではあるが科学的に説明されてある。戦闘シーンが圧倒的なのは相変わらずだが、半村版であった「実は織田信長」というくだりに結構ひねりがきいていておもしろい。過去の名作をリメイクするのだったら、このくらいは気の利いたことをやらなければならないぞと言うことか。
タイムスリップする部隊と一緒にアメリカから託された秘密兵器も過去に送られてしまったのだが、これが話の核心的大問題であった...その秘密兵器とは...いや〜自分はてっきり「GUSOH」かと思った...ほら福井晴敏世界の重要アイテムじゃない〜残念、普通の核兵器でした(どこが残念だ)
寺田君が表紙や挿し絵描いていたので、書店で見つけたときには買おうと心に決めていたのですが、うっかり買いそびれているうちに図書館で見つけてしまったので借りて読みました。ゴメン。確か半村版の文庫では挿し絵を永井豪が描いていたから、きっと寺田君はアノ当時の永井号豪的ポジションにいるのだな〜と思うと、すごいことだな〜
それにしても福井晴敏は寡作だなあ。はやく「Op.ローズダスト」が読みたいなあ。

戦国自衛隊1549

戦国自衛隊1549