「少女地獄」夢野久作

いかにも「萌え(流行語大賞)」的なタイトルだがこれは昭和11年の作品。太平洋戦争の起こる前のコトである。あまりにも有名な夢野久作の代表作であるので、一度は読まなきゃと思っていたと頃、常連になっている図書館の「無料で差し上げます」コーナーで見つけてもらってきた。
自分はちょっと誤解していた。「少女地獄」という一つの話が一冊の本になっているのだと思っていたのだが、実は「なんでのない」「殺人リレー」「火星の女」の三つの短編で構成されていて、その短編同士にはなんの脈絡もない。よく本書の書評で見かけるあらすじ...「可憐なる美少女は実は大嘘つきで、その嘘をごまかすためにまた嘘の上塗りをして、延々ソレを続けているうちに収拾がつかなくなり...」と紹介されているが、実はソレは短編の一つに過ぎなかった。しかもこの話の嘘つき少女は、実は24歳くらいだったりしていて、すでに少女じゃないし...
ああ〜いるいるこんなヤツ。本当に嘘ばっかりついていて、それで一体オマエの何を守りたいんだあ〜って女。てか、男も〜多少の嘘なら笑っていられるけど、多少じゃないうそを沢山言う、ハッキリ言って迷惑千万人間って、いるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいるるいるいるいるいるいるいるいるいるいる(←昔、なにがあった?)
落ち着け自分。
ま、ちょっと悪い過去を思い出しただけってコトでして....
話は変わって、三編の中の一つ「火星の女」の主人公って人見絹枝さんがモデルではないかと思い、調べてみた。オリンピック、第9回 アムステルダム大会(1928)陸上競技女子800m銀メダル。1928年って昭和3年...う〜ん微妙だ。もうちょっと調べてみる。
参照↓
http://www.city-okayama.ed.jp/~fukuhamas/hitomi.htm
年代的には微妙なところだな。死去して4年後にモデルにするか?これはちょっと自分の早とちりのようだ。
自分が読んだ「少女地獄」は角川文庫版だったので、この原本少女地獄に加えて数本の短編が入っていた。「童貞」「煙を吐かぬ煙突」「女坑主」どれもこれも女性に翻弄される男を描いた小品だ。太平洋戦争の足音が聞こえてくる昭和10年当時にこれらのような小説を書く勇気とはいかなるモノか、平成の代に生きている自分にはわからない。かなりヤバいんじゃないかとは思うが...どのみち夢野久作ってヤバくない小説書いてないもんね..というほど読んでもいないか。
とりあえず「ドグラマグラ」は読んでます。名作です。
今気がついた。今回読んだ短編集も割と「ラストが小説の書き出しに呼応している」というドグラマグラ的な作品が多かった。これが夢野スタイルなんだとちょと納得する。本書では「火星の女」がマイベスト。解説では酷評されていたけど....今回読んだ本は角川文庫版の昭和51年の初版だったのだけれども、そこでおもしろい誤字...てか脱字?を見つけた、それは本文中の「け」の時が九十度傾いた状態で印刷されていた。これは現在の電子製版では絶対あり得ない誤植である。つまり「ヨ」の字が「E」と印刷されたようなものだ。写植になってからもあり得ない。ということは昭和50年代当時はまだ活版印刷で活字をアルバイトが必死に拾っていたんだ...かなりびっくりした。昭和51年といえば自分は14歳。ちょうどそのころ「ポプラ社」の少年探偵団シリーズを卒業して大人向け角川版江戸川乱歩を乱読していた時期だった。
その当時の読書が現在の自分の人格形成にかなり影響を与えたことは、たぶん言うまでもない。
あ、そうそう肝心な「少女地獄」ですが、一番インパクトがあったのはそのタイトルでしたから〜残念!(←そういえば「小梅太夫」に喰われた「ギター侍」はどこへ行ってしまったのであろうか?)

少女地獄 (角川文庫)

少女地獄 (角川文庫)