「海辺のカフカ」村上春樹

あけましておめでとうございます。今年も本を読みます。では早速「海辺のカフカ」実に恥ずかしいことなのだが、これだけ流行作家だというのに自分が今まで読んだ村上春樹は「アンダーグラウンド」だけ。しかも半分くらい読んだまま未了だ。今回初めて読了した。
15歳になった少年はが成長してゆく話...だと思ったのだけれど、どうやらそれだけではない。全編にちりばめられる魔術的な世界観。というよりめいっぱいニューエイジっぽい展開。未確認飛行物体、猫の魂で作る笛、落下する魚と蛭、入り口の石、戦時中行方不明になった日本兵が守る森....謎に満ちあふれた世界。その謎が何一つ納得いく説明がなされていない。
なされていないのに、何故かモノスゴク心地よい読後感。これが村上春樹の魔術なのか?
去年自分が読んだ本の中で似たようなキーハードを沢山見かけた。具体的には「半身」サラ・ウオーターズ、昔世界には「男男、男女、女女」という三種類の人間がいたが、ある時神の怒りを買って、体を半部にたたれてしまった。だから人はわが身の半分を探し求めている....「神は沈黙せず」山本弘、コミュニケーション不能な神が、それでも人間に存在を知らしめようと、空中からいろいろな物体を降らせる....などなど。
この本はきっと自分に向かって書かれた本に違いないと思ってしまいそうだ。多分そのように感じてしまった人は自分だけではなく、かなり多く、ひょっとしたらこの本を読んだ人全員が感じてしまっていることではないだろうか。これこそ村上春樹の魅力であり、魔術なのだと....思ったのだけど、どう?
よく考えてみればニューエイジ、ニューサイエンスなどは、みんなが大好きなオカルトのおしゃれな言い換えだし、柔軟に意味を与えることができる謎に満ちたキーワード群などはまさに手練れの占星術師か魔術師ってところだし...それでも感動巨編で一気に読めるのでお正月の暇つぶしにテレビを見るよりは前向きなのでオススメの一冊(上下巻二冊だけど)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)