「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男

犬の目から見た近代史。とはいえ犬は短命なので、何代にも渡って世代交代しながら続く歴史。
メチャクチャ物語の展開が早いので、おいてきぼりを食らわないようにしなければならない。古川流とでも呼びたくなるような小説作法(?)で、二つの話「太平洋戦争当時に無人島に残された犬たちから始まる、冷戦終結までつながる彼らの子孫の物語」が「ソビエト連邦崩壊後のロシアで拉致された日本ヤクザ組長の娘が犬たちと出会い、やがて娘は犬を操る破壊工作員となる」話がエンディングに向かって邂逅してゆく。この二つ、あるいはそれ以上のお話しの邂逅こそが古川流。かなり自分流こじつけではあるが、あたらずしも遠からずな考えだと思う。
以前に読んだ彼の「アラビアの夜の種族」があまりに圧倒的におもしろすぎたので、多少物足りなさは感じるが、それでも「サウンドトラック」で感じた散漫的な印象がない。何より300ページくらいなのですぐ読める。
結局「アラビアの夜の種族」があまりに素晴らしすぎる作品であったということ確認するための本であったかもしれない。ああ「アラビアの夜の種族」ああ「アラビアの夜の種族」結局アノ本で味わった感動をもう一度感じたいが為に延々古川日出男の書物をひもとき続けるのであろう。
次の本は「アビシニアン」だな(全然本の感想になってないぞ)

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?