「人間腸詰」夢野久作

角川文庫の一連のシリーズ。今なら古本屋でいい値段なのであろう。ブックオフでは横溝正史のソレと同じように、全く見かけない。
そんな貴重な本をいつもの市立図書館で「無料お持ち帰りコーナー」で見つけ、即ゲット。だから大好き市立図書館。パラパラめくると「人間の証明」の映画の宣伝が印刷して当時の栞まで挟まれていた。なつかしい「ママ〜ドゥユウリメンバー」である。
表題作の他にいくつかの短編小説の詰まった珠玉の作品集...とは言い切れないところがちょっと辛いが、自分的には表題作と「悪魔祈祷書」てのがおもしろかった。
「人間腸詰」といういかにもっていうタイトルのそのまんまの話。アメリカの万博へ仕事で渡った箱根細工の大工が出会った身も凍るような体験談。こんなコトを言うといやがられるかもしれないが、スパムメールの元となった肉の缶詰「スパム」ってこうして作っているんじゃないかという...いやいや、まさか。先日の牛肉輸入再開直後の危険部位混入事件といい、アメリカで作られている肉製品は油断も隙もあったものではないと...いやいや、とりあえず本書はフィクションだから...ねえ。
「悪魔祈祷書」の方は、探偵趣味的に頭の切れる古書誌が言葉巧みにお客を陥れるお話し。悪いのは本棚の商品を万引きしていったお客の方なのだが、その絡め取り方が絶妙。というか、コレこそ元祖「京極堂(@京極夏彦)」じゃないかと。
夢野久作といえば東京創元社から出ている「夢野久作集」(中身はほとんどドグラマグラ)だけチェックしておけばOKだと思うし、ソレよりもっと深いところを知りたいのなら、近所の図書館で夢野久作全集などが多分書庫の奥にしまってありそうなので、司書さんに聞いてみましょう。古本屋を巡るようになったら立派な探偵趣味である。

いや、自分が読んだのはコレじゃなくて、米倉斉加年が表紙イラスト描いていた、昭和50年代に出ていた文庫。収録作品が上記とはかなり違う。