「八つ墓村」横溝正史

役立たず金田一耕介
とりあえず名探偵金田一耕介はほとんどなにもしていない。彼がいなくても連続殺人は起こり、彼がいなくても事件は終結してしまった。しかも彼は主役ですらない。
でも、これかなり面白かったです。
なぞの地下迷宮。迫り来る追っ手。追いつけられつつもロマンス。そして大団円。まさに血沸き肉踊る少年探偵団の大冒険物語をそのまま大人用に移行させたようなお話。あれ?少年探偵団ものってこの跡にでてきたものだっけ?ちょっとその辺があやふやで申し訳ない。
物語冒頭の大事件は、かの有名な「たたりじゃ〜」の32人殺し。40歳を過ぎた人なら散々コマーシャルで連呼されたあれである。よく考えてみたらこれほど有名な探偵小説を今まで読んでいなかったのが自分的には不思議だ。案外横溝って読んでいなかったのだと反省...あ「犬神家の一族」は読んだよ、当時。
ところで、これを読んで「龍が亭事件」島田荘司(「が」の字忘れた)を思い出した。この本は、かなり無理っぽいトリックで殺人事件が構成されているので、ミステリ的には自分はあまり好きではないのだが、その中に劇中劇として書かれていた、大量殺人事件のお話だけは、かなりよいお話だと断言できる。本編より絶対に面白い。この劇中劇のほうが本編より面白いという島田荘司のスタイルは「アトポス」以降の減少だと思うのだが、この「龍が亭事件」の劇中劇こそが、つまりこの「八つ墓村」のモデルにもなった、大量殺人事件であった。
ま、なんにつけ日本のミステリ界における不滅の金字塔であったことは間違いないであろう]「八つ墓村」をこのタブ無事読了したことは、喜ばしいことである。
例によってほとんど]「八つ墓村」の感想になっていないところは「ああ、またイドのやつのことだからしょうがない」と笑って許してほしい。

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)