「わたしの流儀」吉村昭

沢木耕太郎という作家がいる。きっとかなり影響を受けたのであろうと察せられるが、彼は著作の中で何度も吉村昭のことをリスペクトする文章を書いている。そんな彼が10年以上前に朝日新聞で連載していた旅のエッセイに「彼らの流儀」ISBN:4022564024のだが...
間違いなく、本書は吉村昭から沢木耕太郎に送ったリスペクト返し(また勝手な新語を造るし)にちがいない。
吉村昭歴史小説しかよんでいなかったので、これが彼のエッセイ初読みである。内容はかなり硬派っぽいが、やはりソコは理にかなった一言が満載である。中でも一番気になったのはお小言は
「美術、芸術作品には、何故『無題』という作品タイトルが存在するのだろうか?これが小説ならあり得ない」
ちょうど自分も県展への公募作品をつくっている最中だったので、作品タイトルも気合いを入れて考えねばと思った。
「結婚相手になるような若い青年というのは苦労しているものであって、分不相応に裕福な青年というのは、彼の録ではなくて親の力で裕福なだけだ」
娘のお見合い相手に、どこかの名士のご子息でも紹介して欲しいと頼まれた吉村昭の結婚観というか人生観。ま、若い内は二人で苦労したほうがいいぞということ。彼自身、若い頃は大病したり、なんやかやで苦労満載だった。で、現在の作家としての地位を築き上げたのだから、説得力満載である。
他にも取材旅行には編集者などを伴わず、いつも一人で出かけるため,取材先の地方の図書館司書に「吉村昭を名乗る偽物」と疑われる....などなど、大作家吉村昭の等身大の姿が気負いなく読むことができてグッドです。
この本も薄いから、読んでみそ?

わたしの流儀

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