「空から恥が降る」藤原新也

若い頃はよく読んでいたのだが、ここ10年くらいぜんぜん読まなかった藤原新也。確か最後に読んだのが「平成幸福音頭」だったか「アメリカ」だったか...本書は彼のブログを編集したモノ。
http://www.fujiwarashinya.com/main.html
ということは、この本を買わなくてもネットで見ればタダってことか?中心の話題がアメリカの同時多発テロだったりすするから、そのころ発行された本なのだと理解する。アメリカ。これだけ日本人の中で(いや、自分個人かもしれないが)印象の変わった国もない。戦前は「鬼畜米英」とかいっていたのに、戦後数年で「アメリカよい国ららら〜♪」と笠置シズ子が唄うくらい(笠置さんに罪はない。てか、大好き)変わってしまうのだ。この尻軽さが日本人の良いところなのかもしれないが。自分も青春時代には恥ずかしげもなく「アメリカバンザイ」だった。とにかくアメリカは世界一なのだ。ナニが世界一かはおいておいて、世界一なのだ。
若気の至りも、今となっては懐かしい。
映画から音楽まで、すべてアメリカ発信の文化まみれだった自分が、何か違うと思い始めたのはいつ頃だったのかは、すでに忘れてしまった。しかしそのきっかけは間違いなく中村とうよう(大昔ミュージックマガジンの編集長だった人)と藤原新也に違いない。(その後に沢木耕太郎なども入ってくるのだが)
同時多発テロの直後にこんなブログ書いていて、よく無事でいたモノだ。いやむしろ、藤原が書かずに誰が書く。
表題の「空から恥が降る」とは、アメリカの食料援助物資のまずさを物語っている。食料援助物資がパラシュートにぶら下がって、飛行機から落ちてくる。ところがまずくて食えたものではないのだよ。第二次世界大戦時からアメリカの食料援助物資はマズイモノと相場が決まっている。あの有名な「スパム」肉の缶詰だが、当初は確かヨーロッパへの援助として大量に送られた。そのあまりのまずさに、しかも大量に送られたということから転じて、現在「スパムメール」という新語としてよみがえっているくらいだ。

世にフランス料理、イタリア料理、ベトナム料理、中国料理、そして日本料理など、国の名を冠した料理は星の数ほど存在するわけだが、我々は「アメリカ料理」「イギリス料理」という料理のカテゴリーをトンと耳にしたことがない。
名言。
イギリス料理も批難しているようだが、本編はほとんどアメリカの悪口である。正確にはアメリカ料理の悪口である。まあ、今すぐにアメリカ料理をいくつか上げよと言われても「マック?」くらいしか思いつかない。食は文化だねえ...文化がマズイのは、恥ずかしいねえ。
空から恥が降る (文春文庫)

空から恥が降る (文春文庫)