「バンギャル ア ゴーゴー 下」雨宮処凛

去年年末に無事借りることができて、名古屋出張中の友となった本書。上巻では主に北海道を中心に活躍していた主人公達バンギャルが、とうとう東京進出してさらにヒートアップする下巻。お馴染み「えり、ノリコ、ユキ、雅」が東京で華麗な追っかけライフを展開する〜ってな展開ではどうやらなかった。ソコはソレ北海道で家出常習娘ではあっても東京となるとソコには生活という厳しい現実(てか、上巻もかなり厳しい追っかけライフなのだが)が待っていた。
生活のため「えり、ノリコ、雅」の三人はキャバクラ嬢となるのだが、その容姿のため全く指名のとれない雅にまず危機が来て、解雇。その後も心臓疾患があるにもかかわらず追っかけやっているユキに至っては、売れないバンドマンがひもになり、生活のため風俗へ...しかも怪しいドラッグ「S」(といえば聞こえはいいが、要は覚醒剤だな)でボロボロ状態。コレは死亡フラグがはためいているなと思っていた。
ところが、いきなりの急展開。
それまで、当初の目的「追っかけ」がどこかに行ってしまいかけたときに、ビジュアル系カリスマバンドのリーダーが突然の自殺。そこからまた話が急展開だ。キャバクラ仕事している場合じゃない。風俗仕事をしている場合じゃない。いざ葬式会場へ突撃するのがバンギャルの使命ではないかと、ようやく目覚めた彼女たち。葬儀会場はすでに阿鼻叫喚の一大パノラマ。絶叫、失神、泣き崩れ、どころか後追い自殺まで飛び交う生き地獄から彼女たちは無事生還できるのであろうか?
前半のセックスドラッグロックンロール(ロックじゃなくてビジュアルだけど)でまるでフィリップ・K・ディック後期のドラッグ小説のような暗黒ラリパッパな状況からの鮮やかな再生。ラストの筒井康隆的はちゃめちゃ空間がカタルシスを産む。
むちゃくちゃな青春なのだが、コレが雨宮処凛の青春なのだろうなと解釈させてもらっても良いのであろう。どんな青春でも青春は青春。何故ビジュアル系なのだと疑問に思う人には、青春の甘酸っぱさなどはカケラもない青春に思えるが、そんな中だからこそ、きらきら光り輝く青春というのもアリなんだ。願わくば、もう雨宮処凛が御両親に心配かけるような生活を送っていないことを祈るばかりだ。
バンギャル→ミニスカ右翼→現在(30歳すぎて)コスプレ作家という波瀾万丈な人生を送っている彼女。もし自分の娘だったら、心配でしょうがない。ま、これだけ厚い本(上下巻で800ページ)を出したのだから、少しは娘も堅気になったかと、御両親も安心だろう。
おもしろいから是非読むように。図書館になかったら、是非リクエストしよう。買うのもイイゾ(順番が逆では?)
雨宮処凛あなどりがたし。

バンギャル ア ゴーゴー 下

バンギャル ア ゴーゴー 下