「日本沈没 第二部」小松左京 谷甲州

30年以上の時間をあけて、ついに出た日本沈没第二部。確かに「日本沈没」では最後に「完」ではなくて「第一部 完」とあったので、出版されてもおかしくはない。去年の映画版日本沈没リメイクに合わせた企画でもなければ絶対実現しないはずだ。とはいえ、映画公開からすでにかなりの月日が過ぎ去った今となっては、手元にある「日本沈没 第二部」という本は、何だか存在感がいまいち微妙だ。
最初に言っておく。自分はリメイクされた日本沈没は見ていない。しかしこの本はその映画の続編のノベライズではない。前作の映画版の続きかというと、ソレも怪しい。むしろ小説の正統的な続編なのだ。だから第一部をきっちり読んでいないと、特に登場人物なんかに齟齬が出てくるであろう。
と言ったって、何せ前作は30年以上前の発表だよ。前作をリアルタイムで読んだ世代。たとえば自分にしたって、当時小学六年生が今では44歳のオヤジだ。よほど酔狂で、つい最近に小松左京日本沈没を読んでいる人(自分だ、自分)でもなきゃ、話が見えてこない。特にラスト近くの細かなニュアンスは絶対わからない。やっぱりこの本は第一部がでた数年後に出すべきであった。時の流れは無情である。日本列島がどんなに草薙主演の新作映画に湧いていても(しかも、そんなことはなかったが)決してベストセラーなどにはなりはしないかわいそうな本なのだ。
たとえば、第二部で明かされた吃驚な事実。何と死んだと思われていた阿部玲子は生きていた!!
ほら、誰も驚かないだろ。
とりあえず、自分は今回、第一部とほとんどタイムラグを置かず第二部を読んだので、割とつながっているんだよね。谷甲州といえば、たしか架空戦記モノが得意なSF作家だと思ったが、日本が沈没した後の世界情勢はどうなるか?という基本的なことを実に緻密に表現していると思う。タダ自分が「架空戦記」というジャンルにあまり興味が湧かない人間なので「ふーん」と軽くスルーいてしまった。
特定の主人公はいないのだが、中心人物としては渡桜(わたり さくら)という第一部で出てきた謎の長老、渡老人の孫の娘(と言っても、この人自体がほとんどちょい役なので覚えている読者がいるのであろうか?)そして死んだと思われていた小野寺のかつての愛人、阿部玲子。彼女は国連高等難民弁護官となっていた。そして第一部の主人公小野寺は、カザフスタンで日本人自治区を作り、政府軍とのレジスタンスを指揮する。過去の記憶をなくし、ここでは小野田と呼ばれている。そのほかにもいろいろな人物が絡み合い、物語は国土を無くした日本人がたどるべき姿を提示して物語は大団円となる。
ラストの描写、未来の日本人の末裔が、船団を組んで宇宙へと旅出って行くというのは、どう考えてもイランと思うのだが、どうよ。
そうはいっても最近はアシモフの短編をシルバーバーグが引き継ぐなんていう形の小説を続けて読んだ後だったから、この様に「巨匠の小説を引き継ぐ」という形もそれほど違和感なく読めた。まあ、コレはコレで一つの形なんだろうなあ。

日本沈没 第二部

日本沈没 第二部