「夢を与える」綿矢りさ

芥川賞最年少受賞作家のようやく出た受賞後第一作目だ。どのくらいようやくぶりかというと、同受賞した金原ひとみの受賞後第一作がすでに書店で文庫本として出ているくらいの期間になるのだ。
それにしても最近のアイドル業界はモーニング加護、辻に代表されるように、突然の出来事で姿を消しちゃう人が多いこと。なんか本書の内容とシンクロしてタイムリーな感じだ。若くして頂点を極めてしまうと、そこから転がり落ちるのも早いモノだ。そりゃ19、20の女の子に大人達が「君たちは我々社員の生活がかかっているので、イメージを崩さぬよう品性校正にしていなさい」といわれても、ソコは生身の人間だし、まさか普段閉じこめているわけにも行かないから、それなりにいろいろやらかすわけであって、その辺がいかにも人間くさいのだが、そんなことを許容してくれるほど、一般社会に包容力はないわけだ。
それにしても辻ちゃんの話題が出ると必ず「ダンナはウルトラマン」と紹介されるのは何とかならんのかなあ...そういえばコスモスって(えん罪だったにせよ)辻ちゃん報道どころではない大事件だったもんな...いろいろ言われてもしょうがないか。
そんなわけで、本書は、ナチュラルボーンなかんじでアイドルだった主人公が転落していくまでの成功と挫折の物語である。転落したときの年齢がやっぱり19歳だったりするあたり、この年齢はきっとアイドルにとっては魔の年齢なのであろう。
全二作と同じように作者特有のしなやかな文体が、今回もそこかしこに感じられ、交換がもてたが、その文体のママズルズルと泥沼に落ち込んでゆく描写は、しなやか故にやるせなさが倍増するモノである。
きっと一生比較されるであろう作家の、乱暴な事象を乱暴な文体で力任せの金原ひとみとはちょっと違う。いや、金原ひとみはコレで良いのだろうが、自分的に読むのがしんどかったりする。でも一般若者達の間でカルト人気なのは金原ひとみなのだろうな...ところで、発売してまだ間がないのに、すでにブックオフで投げ売りされている「夢を与える」を見ていると、内容のアイドルを彷彿させられて、つらい。あまりに短期間で売れすぎると、消耗され捨てられるのも早いってコトなのかもしれない。

夢を与える

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