「ブラックサンデー」トマス・ハリス

ご存じハンニバル・レクターの生みの親、トマス・ハリスのデビュー作である。
デビュー作ですでにこの筆圧、やはりただ者ではかなったのです。
国際テロリストがたくらむ攻撃を対テロ組織が阻むという、スパイ小説の王道を行くような物語と言ってしまえばソレまでだが、そんな小さな枠に収まりきらないのがトマス・ハリスのすごいところであって...
読み進めているといつの間にかテロリスト側に感情移入してしまっていて、テロの成功をつい願ってしまうという、とんでもない内容なのだ。トマス・ハリスの魔力に取り込まれてしまった。考えてみれば「羊たちの沈黙」にしても「ハンニバル」にしても、常に感情移入しているのは「レクター教授」だったりするわけだから、この作風はすでに第一作から完成されていたのであろう。
身も蓋も救いもないラストに、少々鬱状態だが、ココまで広げた物語を収拾するには、これくらいがちょうど良いのかもしれない。
そういえばレクター教授がいかにしてレクター教授とあい成ってしまったかという小説が最近出ていなかったっけ?コレも要チェックだなあ。ハンニバル・ライジング

ブラックサンデー (新潮文庫)

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