「ゲゲゲの女房」武良布枝

ここのところ二段組800ページの大作とか古典の名作とか、やたらと肩の凝る本ばかり読んできたので、この辺で軽〜い本が読みたいなあと思った。
タイトル見れば一目瞭然、ゲゲゲの女房こと水木しげる大先生の奥様の手による半生記だ。この手の作品で有名なモノは「宿六・色川武大」色川孝子さんが有名だ。ご存じギャンブル小説の大家、阿佐田哲也の奥さんだ。コレは阿佐田氏の死後書かれたので、かなり辛辣な阿佐田評が書かれているが、本書はまだ水木氏が生きているせいか(オバケは死なない)それほど辛辣ではない。むしろ、極貧の中で貸本マンガを書いていた時代の方が、貧乏だけど幸せ。これが鬼太郎のヒットなどで、大金が転がり込んできてからは、生活は安定するが夫婦の会話もなく、睡眠時間を削っては仕事に追い立てら、幸せとはほど遠い状況に陥ってしまう。全く人生ってヤツはうまくいかないモノだ。
いろいろおもしろいエピソードがある。水木の娘が実は手塚治虫ファンで、親にこっそり手塚マンガを読みふけっていることを、水木が苦々しく思っていたのだ。後年水木が手塚治虫マンガ賞を取ったときに、手塚の息子、手塚眞と会場であったときに「実はぼくは水木マンガのファンで、親にこっそり読んでいたのですが、父は苦々しく思っていたようです」との話。
どっちもどっちで、とてもいい話だ。水木の波乱に富んだ半生を綴った自伝マンガ「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」を併読すれば、おもしろさ倍増だ。
水木ファンは必見の一冊。

ゲゲゲの女房

ゲゲゲの女房