「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク

高校生の頃にハヤカワ文庫版で読んだ事があるが、今回は光文社の新訳シリーズで読んだ。内容はほとんど変わらないのだが、その後ソビエト崩壊などの歴史的事件があったので、とりあえず初めの少しだけ改正されているらしいが、あまり気にならない程度(気がつかなっかた)むしろクラーク自身による本編前の解説が興味深かった。それによって高校時代に読んだ時とはあまりにかけ離れた印象を持つことになったのだが...
SFのオールタイムベストを企画すると、必ず上位に入る本書であるが、はじめて読んだときほどの感動がないのは、きっと自分の脳髄に「と学会」の精神が刷り込まれているからであろう(←おおげさ)
過去の歴史上で偉業を成し遂げた偉人達の多くが、何故か晩年「トンデモ」系にはまってしまうのは何故だろうか?本気で霊界通信機を発明しようとしたエジソン。奇想天外な地震兵器を開発したらしいニコラ・テスラ。幽霊の実在を証明した者に多額の賞金(結局インチキ手品師しか集まらず、全部見破ってしまった)フーディニー。少女達が撮影したインチキ写真(妖精のイラストをお花の前に置いて撮影しただけのショボイもの)にころっとだまされ妖精の実在を信じ、彼にホームズの英知があればと称されたコナン・ドイル
偉人達のたどり着く場所はなぜかスピリチュアルなのである。
科学を超えた存在、それこそがスピリチュアルなのである。
そして人類こそが、宇宙でも希なスピリチュアルな存在である。
スピリチュアルこそが、人類を高次元進化へと押し上げる力なのである。
....ま、ゲッター線みたいなものだ...
悪魔のような容貌のオーバーロード達は実はとてもいいヤツばかりで、ともだちになりたいなあ。
なんだかんだいったって、とりあえず読んで損はない一冊...なんだけど、個人的には「宇宙のランデブー」や「2001年宇宙の旅」の方が好きかな。訳のわからないものは訳のわからないままでぜんぜんよろしいというような、読者突き放し的な感じがね。クラーク自身は2001のキューブリック映画はあまり好きではなかったらしいけど。小説版は映画のわかりやすい解説書みたいだったなあ。
クラークって、バリバリハードSF者だと思っていたら、最高傑作と皆に賞された作品がバリバリハードスピリチュアルだったことをこの歳になって再確認してしまったことに、軽いめまいを感じている始末だ。
いや、でも、結構おもしろいか....な?

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

↑今回読んだのはこちらの光文社版。
↓高校時代にはじめて読んだのはハヤカワ版。現実世界がかなり政変しているので、読み比べるとおもしろいかもしれない。もっとも違いは第一章だけと思う。
幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

やっぱりオーバーロードの大将の名前は「カレラン」より「カレルレン」の方がカッコイイと思う。