「緋色の研究」コナン・ドイル

ちょっと前に映画を見に行ったとき、上映時間に間に合わなくて二時間くらい待たなければならなくなった。その時、時間つぶしにと近くのブックオフで急遽買ってきた105円の本がコレだ。
中学校の図書館には必ずあった推理小説三大シリーズといえば「江戸川乱歩の少年探偵団」「モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパン」そして「コナン・ドイルシャーロック・ホームズ」である。正直いって自分は乱歩派だったので、ルパンもホームズもほとんど読んだことがない(ルパン対ホームズは読んだが、アレはルブランの創作物だ)
なんかホームズは、ワトソン医師の「こんなヤツのこんな話があるのだが」という語り口がどうも幼少の頃から自分には合わなかったらしく、短編を数編読んだだけでほとんど読まなかった。それが何故突然読む気になったか、それは...
ちょうど二時間ほどの待ち時間で読み切れそうなページ数だったから。
実に簡単な理由であった。もっとも待ち時間に読めたのはその半分くらいであり、物語が急展開したのは半分以降。それがあまりにもとんでもない急展開で、全く予想もつかない事だったので、ぶっ飛んでしまったわけだ。正直その日に観た映画よりものすごくおもしろかった。観たのは「仏陀再誕」だった(←おいおい)
推理小説というよりはトンデモ小説というか、誰もが思いつかない意外な犯人より、ソコに至るまでの犯人側の物語があまりによくできすぎている。島田荘司とか好きな人ならわかってもらえるだろうか?「アトポス」で本編より、膨大なインサイドストーリーのエリザベート・バートリの物語の方がとてつもなくおもしろかった、アレだ。その感覚と同じ物があった。
というか、こっちの方が先だし。
名探偵コナンなどという長寿番組があるくらい、我が国でもこの有名なコナン・ドイルではあるが、果たして現在この緋色の研究のとんでもなさを理解している名探偵ファンがいるのであろうか?
話を緋色の研究に戻そう。実におどろおどろしいタイトルであり、なにか奇っ怪な博士が、前史時代の怪奇生物を復活させようと邪悪な研究に没頭していそうなタイトルだが(←ラブクラフトの読み過ぎ)そんな馬鹿な展開をするわけがない。事件が起きて犯人を捕まえるまでの話が前半。前半のラストで捕まえた、唐突に現れた真犯人が、何故犯人かという因縁話が後半。警察のお偉いさんは、お約束のようにぜんぜん違う犯人を逮捕して悦に入っていたところでの真犯人の登場。しかし読んでるこっちも「その犯人は誰?」というくらいミステリー文法に犯則ギリギリだと思うのだが、それをまさにフィクションの力業で無理矢理納得させてしまうドイルの筆の技である。
なにせ、イギリスのロンドンでおこった事件の真相が、突然アメリカ開拓時代のモルモン教徒の話にぶっ飛んでしまうのだから。
コレを読んだロンドンっ子達がホームズに熱狂して「早く続編を」ってなわけで、世界に名だたるシリーズが誕生したのだから...イギリス人あなどりがたし。普通コレを傑作と褒め称えられるのであろうか?イヤでもコレ自分こんなの大好きです。
本当におもしろかったから、コレに懲りずに「バスカヴィル家の犬」「四つの署名」なんかも読んでみたい。
実は今ドイルのトンデモSFシリーズを読んでいたりする。イヤコレもむちゃくちゃでいいなあ〜さすが元祖トンデモさん。エジソンと共に心霊現象詐欺師達に散々カモられた偉人はやっぱり違うな!!(←おいおい)

緋色の研究 (新潮文庫)

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